[牙] Chapter 5 episode: Decision――オリジナル小説(ライトノベル)の連載:最新話

最新話を『小説を読もう!』に投稿

(冒頭部分)

 学校の部室棟は教室棟とはまるで雰囲気が異なり、同じく空間に存在するとは思えないことがある。
 そこにある文学部の部室はいつになく賑やかで、運動部とはまったく異なる、ある種独特の活気に満ちていた。
 参加率が高いことで知られる同部は、狭い部屋の中に三学年十六人が集まり、いろいろな議論を交わしたり、互いがつくった短編などを批評し合ったりしていた。
 そんな中、翔子と弥生は部屋にあった文庫本を片手に無駄話に花を咲かせていた。
「あーあ、美柚と蓮くんは二人してどっか行っちゃうし、私は同性とだらだらか」
「仕方ないよ、用事があるみたいだったし」
 本当は事情を知っていたが、今話せることではなかった。
 今日は、〝DIY部〟との掛け持ちで文学部にも所属している弥生に翔子が勝手についてきたのだった。
 マンガ研究会――いわゆる〝マン研〟に所属する翔子は、本来こことはまるで関係ないのだが、暇なときよく入り浸っていた。
「あー、あの二人の夫婦漫才見たかったのに」
「…………」
「あれ? 不愉快? 妬いてる?」
「し、知らない」
「弥生はかわいいなぁ」
 まるで猫にするように目の前の頬をふくらませた少女の頭をなでなでしていると、隣に誰かの気配があった。

つづきを読む

Posted by takasho