[牙] Chapter 3 episode: Uninvited Guest――オリジナル小説(ライトノベル)の連載:最新話

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(冒頭部分)

 木製の大きな門は堅く閉ざされ、来る者を拒むかのように威圧感を容赦なく放っている。
 気が滅入る瞬間だ。
 どうせ錠はかかっていない。勝手に門を開けて中に入ると、予想どおりの人物が予想どおりの位置に立っていた。
「久しぶり、じいさん」
「――何をしに来た、勝俊」
 苦笑してしまうほどに硬質な声が返ってきた。
 鈴木 源流。
 この屋敷の主にして、一帯の〝Xハンター〟を治める者。
 厄介な存在だった。
「お前がここに来る理由はもうないはずだ。鈴木家の宿命を放棄したお前には」
「そう言わないでよ。たまには顔を見に来たっていいじゃないか」
「今度は何が狙いだ」
 ややうざったそうに息を吐いてから告げた。
「美柚に会いに来たんだよ。それだけだ」
「…………」
 美柚の名前を出せば、なぜか通る。
 沈黙した祖父の横をすり抜け、勝手に屋敷に上がった。
 懐かしい印象もあるものの、それほど離れていたわけでもない。
 今どき珍しい純和風の居間に座り込んだ。
 自分がこの場所にいる違和感は消えずに、ずっと居心地の悪さが胸中に残る。
 ――これでよかったのか。
 とも思うが、今さら引き返せるわけでもなかった。
 この日何度目かのため息をつくと、程なくして外が騒がしくなってきた。
「お前はジャージを着ていたほうがいい。普段は破廉恥極まりないからな」
「どういう意味!?」
「奥ゆかしさのかけらもない女は、地味なジャージでも着ておとなしくしていろ。まったく、人前で脚をさらすなんて――」
 鈍い音が響いてきた。どうやら殴られたらしい。
「……そういうところが奥ゆかしくないと」
「まだ言う!?」
「ふんっ、お前はどうせ婚活難民だ」
「はあ!?」
「婚活以前の問題だ。婚活する資格すらない。一生独――」
 木がざわめく音が聞こえてきた。どうやら街路樹にぶつかったらしい。

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Posted by takasho