[牙] Chapter 3 episode: Slasher Has Come 1――オリジナル小説(ライトノベル)の連載:最新話

2013 年 1 月 25 日

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(冒頭部分)

 うまく喧噪を抜け出した蓮は、ひとり廊下を階下へ向かって歩いていた。
 いつもいつもいつも厄介ごとに巻き込まれる。腹立たしいことこの上ない。
 蓮に、自分が最大の原因だという自覚はまるでなかった。
 いら立ちまぎれに床を蹴飛ばしながら進んでいくと、やがてようやく突き当たりに階段が見えてきた。
 ――無意味に広い。
 移動するだけで疲れてしまう。一学校にここまでの敷地が必要だとはとても思えなかった。
 ――これこそ資金の無駄づかいじゃないのか。
 心中で悪態をつきながら、人通りの少ない階段を下りる。
 やがて、広い昇降口が見えてきた。そこには、いやに目につく存在がいた。
 まだ休み時間だというのに、先ほどからんできた〔騎士団〕の連中がせっせと窓を拭いている。
「ご苦労なことだ」
「あ、華院! てめえ……!」
 芦山が手を止めないままに、蓮を睨みつけた。
「驚いてないな。術には気づいたってことは、お前も同業者か」
「うるせえ! さっさと術を解け!」
「頼む奴の台詞じゃないな。もっと頼み方というものがあるだろう」
「お前にだけは言われたくねえ!」
 もっともだと、他の全員が同意した。

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Posted by takasho