[牙] Chapter 4 episode: Slender Fencer 4――オリジナル小説(ライトノベル)の連載:最新話
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(冒頭部分)
蓮は、居住まいを正して女に注意を戻した。
「失せろ、女。今は見逃してやったが、次はないと思え」
『何を偉そうに』と返したいところだったが、最前の一連のことを経験した今、声は出なかった。
そこで、麗奈は作戦を変えることにした。
いつの間にか、例の薬の入った瓶は相手の男の足元に転がっている。
「――――」
無詠唱のまま術式を組み上げる。
そして、相手に悟られないように発動させた。
瓶が浮かび、音もなくこちらへ向かってくる。
「!?」
あわてたのは蓮だった。
知らぬ間に肝心の瓶を離してしまい、あまつさえ今、目の前で女のほうへ飛んでいくではないか。
獲物を軽くキャッチした麗奈は、迷うことなく倉庫の出入り口へ向かった。
「ま、待て、この女……!」
急ぎ追いかけようとするものの、壊れた棚の脚につまずき、盛大に音を立てて転んだ。
しかも、別の棚が倒れ込んできて、ダンボールの山の中に埋もれてしまった。
もはや、女が逃げていく背中しか見えない。
だが、伏せていたからこそいち早く気づけたこともあった。
完全に折れて先のとがった鉄骨が床からひとりでに浮かび上がり、女のほうへ向かっていく。
――なんだと!?
体を強引に起こしながら叫んだ。
「後ろだッ!」
今までとは異なる声音に、麗奈ははっとして振り返った。
眼前に凶器――
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