[つばさ] 最新話を投稿:第八章 終わりの始まり 第二節――無料で読めるファンタジーのオリジナル長編小説
(冒頭部分)
ジャンは、焦燥感に駆られていた。
――まさか、こんなことになろうとは!
ヴァイクに対して申し訳が立たない。ベアトリーチェを任されたというのに完全にはぐれ、日も陰ってきた時間になっても未だ見つけることはできないでいた。
先ほど神官と交わした言葉が、まざまざと思い起こされる。
『いくら治安のいい帝都とはいえ、暗くなってからの女性のひとり歩きは、かなり危険ですよ』
初めは、ベアトリーチェも大人なんだからいちいち構う必要はない、そのうち戻ってくるだろうと楽観視していたのだが、その考えはやや甘かった。
大神殿側の冷たい対応は、想像よりもずっと彼女に重い衝撃を与えていた。冷静な判断が可能な精神状態ではなかったのなら、自分で帰ってくるはずもない。
――俺のばか!
それなのに、自分はカセル侯のもとへ陳情に赴いたりと、己のことしか考えていなかった。夕方になり、まだ大神殿に戻っていないことを知ってからあわててみても、すべては遅すぎた。
(つづきを読む)