[つばさ] 最新話を投稿:第五章 真実 第二節 二――無料で読めるファンタジーのオリジナル長編小説

最新話を『小説家になろう』に投稿。

(冒頭部分)

 足下から伝わってくる振動は、船底の外壁部分を破壊しようとしているものだっだ。そこに穴を空けてしまえば、飛翔石のあるところまではすぐだ。
「しかし、閣下。ここをこれ以上減らしたら、もうさすがに持ちません」
「だったら、全員で船底に行くんだ。ここで耐えていても、飛翔石を奪われたら元も子もない。それに、艇の中のほうが――」
 フェリクスは、こころの中で自身の頭を殴りつけた。
 ――そうだ、初めからそうすればよかったのだ。
 甲板の上では、空を飛べる相手にいいようにやられてしまう。
 しかし、艇の中に入ってしまえば通路が狭いので、数の多寡があまり関係なくなるうえに、相手は翼が使えない。こちらとしては、これ以上ない形に持ち込めるはずだった。
 ――もっと早くにそのことに気づくべきだった。そうしておけば、いたずらに兵の命を犠牲にせずともよかったものを……
 しかし、今は後悔している暇|(いとま)さえない。フェリクスは、全員に向かって声を張り上げた。
「陣形を組んだまま下がるぞ! いったん艇内に入るんだ!」
 よく訓練された近衛騎士と飛行艇兵団は言われたとおり、隊列を崩さないようにしてじりじりと後退を始めた。

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