[つばさ] 最新話を投稿:第一章――ファンタジーのオリジナル長編小説

最新話を『小説家になろう』に投稿。

(冒頭部分)

 それでも、たいした広さのある森ではない。しばらく飛んでいると、森の中央付近に高い木々に囲まれた館を見つけることができた。
 おそらく、ここがそうだろう。ヴァイクはすぐに降り、テオの名を呼んだ。
「テオ! いるか!?」
 すぐには返事は来ない。だが、遅れて館の奥のほうから彼の野太い声が聞こえてきた。
 しばらくすると、扉を開けてあのごつい体が姿を現した。足の治療はすんだらしく、包帯を巻いて松葉杖をついている。
「ヴァイク! よかった、無事だったか」
「テオ、こいつらを頼まれてくれ。俺は、もう少し町の様子を見てくる」
「待った!」
 リゼロッテらを預けるとすぐさま再び飛び立とうとしたヴァイクを、テオが鋭い声で呼び止めた。
「なんだ?」
「実は、ベアトリーチェさんが神殿のほうへ行くって、はぐれちまったんだ」
 ヴァイクは頭を抱えた。
 ――なんでこう次から次へと!
「どうして止めなかったんだ!?」
「すまねえ……森から近づけば神殿の裏手がすぐだから、なんとかなるって言って聞かなくて」
 ヴァイクは歯がみした。
 テオはけっして言い訳にはしないが、足に怪我を負っている。仮にカトリーネを抱きかかえていなかったとしても止めきれなかったであろうことは、容易に想像がついた。

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