[つばさ] 最新話を投稿:第四章 さよならの言葉 第四節――無料で読めるファンタジーのオリジナル長編小説

最新話を『小説家になろう』に投稿。

(冒頭部分)

 雨が少し降ったせいか、少しひんやりとした心地のよい風が吹きすぎてゆく。草原の草花は雫に濡れ、かすかな陽光にきらめいている。
 アーデとユーグは、城の西にある平原を訪れていた。しばしば軍の訓練に使われている場所だ。よく見ると、あちらこちらに矢柄が落ちているが気にしないことにした。
「やっぱり、乗馬は気持ちがいいな」
 アーデは、栗毛の馬に乗って悦に入っている。
 その隣で、ユーグは憮然とした表情をしていた。
「相変わらず、殿下はお元気ですね」
「相変わらず、ユーグは不景気な顔してるわね」
 ちょっぴり皮肉を込めて姫に言ってやったのだが、まったく通用しなかったようだ。アーデが涼しい顔で返してきた。
 まったく、この華奢な体のどこに無尽蔵とも思える体力が潜んでいるのかと思う。ノイシュタット侯の妹姫とはいえ意外にやるべきことが多く、ほとんど時間的な余裕はない。
 にもかかわらず、疲れた様子は微塵も見せずにこうしてあっちこっちへ動き回っている。元気なのは結構なことだが、それに付き合わされるほうはたまったものではない。
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