[つばさ] 最新話を投稿:第三章 再会 第一節 一――ファンタジーのオリジナル長編小説

最新話を『小説家になろう』に投稿。

(冒頭部分)

 春とは思えぬ強い日差しが射す中を、ひとりの翼人とふたりの人間がともに北へ向かって歩いていた。
 今は、街道を少し離れた森の中にいる。さすがにこの辺りまで来ると、街道を頻繁に人々が通り過ぎていくようになる。翼人が人間に見つかると騒ぎになるので、あえて道から外れたところを進んでいた。
 旅慣れておらず、ましてや道なき道をゆく経験などまるでないベアトリーチェにとっては非情に厳しい道程だ。木の根に足を引っかけ、鋭い枝に服を破られ、脆い足場に倒れそうになる。それでも、音を上げることは一切せずに歩きつづけていることは立派だった。
 しかし、リゼロッテだけは違った。
 明らかに様子がおかしい。うつむき加減で歩くことが多く、少し動いただけで息が上がってしまう。
 ジェイドが不足している。
 だから、体が弱っていく。
 ――リゼロッテ。
 ヴァイクは、できることなら抱えて運んでやりたかった。大変なのは事実だが、ベアトリーチェと一緒でも、ある程度の距離ならば飛べる。
 だが、ここはもう人間の集落に近い。
 アルスフェルトの件はすでに各地へ伝えられているだろうし、そうした難しい時期だからこそ自分たち翼人が目立った行動をするわけにはいかなかった。
 何より、リゼロッテが人の手を借りることを拒絶した。
 少女ひとりくらい抱きかかえて歩くことくらなんの問題もないのだが、リゼロッテにはリゼロッテなりの誇りというものがあるようだった。
「ヴァイク……」
「ああ、わかってる。少し休むか」
 それでも、さすがに限界が近づいていた。
 ベアトリーチェに応えたヴァイクの言葉に、少女はほっとしたような顔をし、すぐ近くにあった樹木の根元に倒れるようにして座り込んだ。

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