[つばさ] 最新話を投稿:第三章 再会 第一節 三――ファンタジーのオリジナル長編小説

最新話を『小説家になろう』に投稿。

(冒頭部分)

「ベアトリーチェたちはどうしてる?」
「さっきの場所で待って――ああ、いたいた」
 前方の木の陰に、二人の姿が見えた。所在なく歩き回っていたようだが、こちらに気づくとぱっと顔を輝かせた。
「ベアトリーチェ、リゼロッテはどうだ?」
「ええ、今は落ち着いてるけど。それより、ヴァイク――」
 右の翼のひどい傷を目にして、ベアトリーチェがはっと息を呑んだ。
「すまない、うちの村人が誤って撃ってしまったみたいなんだ」
「あのセヴェルスとかいう野郎がな」
「ええ!? や、やったのはセヴェルスだったのか……」
 ヴァイクとしては、あの弓使いへの当てつけを言っただけだったのだが、ジャンは自分が重大なあやまちでも仕出かしてしまったかのように落ち込んだ。
「誰がやったかより、すぐに治療しないと――ああ、でも傷薬がない」
 自身の旅用の袋|(ザック)をあさっていたベアトリーチェだったが、首を横に振った。
 解熱用の軟膏はあるが、肝心の外傷用の薬がない。ここに来るまでにいろいろあって、ヴァイクがあっちこっちに切り傷やらすり傷やらを負って帰ってくることが多かったせいで、それなりに多く用意したつもりがまったく足りていなかった。
 結果、ひどい傷を負ったヴァイクを無力に見ていることしかできない。
「そうだ、俺が村へ行って取ってくるよ。ちょっと待っててくれ」
「その必要はない」
 すぐに走り出そうとしたジャンを止める声があった。獣道の奥のほうから、足音が聞こえてくる。

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