[つばさ] 最新話を投稿:第六章 雌伏のとき 第四節――無料で読めるファンタジーのオリジナル長編小説

最新話を『小説家になろう』に投稿。
アットノベルスにも)

(冒頭部分)

 今日は風の強い日だ。空には重苦しい雲が立ち込め、太陽は朝から顔を出していない。日照不足に悩む南東部の民のことが心配だった。
 カセル侯ゴトフリートはヴェストベルゲンにある城のバルコニーに出て、厳しい目で南の空を見つめていた。
 そこに一切の弱さはなく、ただ強さのみがある。これまでいくつもの修羅場をくぐり抜けてきたからこそ勝ち得た、怜悧なまでの鋭さであり、燃えるような激しさであった。
「ゴトフリート様」
 背後からの声があった。
「こんなに風の強い中、ずっと外に出られていてはお体に障ります。部屋へお戻りください」
 そう呼びかけたのは、副官のルイーゼであった。言葉のとおり心配げな表情で、暴れる髪を押さえながらゴトフリートの斜め後ろに控えている。

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