小説執筆最速マスター:初心者向け入門講座――作法・体裁編

地の文(本文)

段落は、かならず先頭を全角スペースで一字下げる。

 ノルトファリア帝国は七人の選帝侯によって分割統治されているが、かつてはそれぞれが独立した小王国だった。
 しかも、元は十二の王国が存在し、ひとつが異民族との争いの中で消滅し、四つはそれぞれ統廃合される中で他の国に吸収されていった。
 そして今から約二五〇年前、七王国すべてを巻き込む〝ハルヴァー戦役〟が起き、そのすべてが疲弊しきってしまった。

会話文

鉤カッコ「 」で囲う。場合によっては、( )や『 』を使うこともある。

閉じカッコの前や後には、読点「。」をつけない。

地の文とは異なり、段落の先頭を一字下げることはしない。

「今は、どこの地域も厳しい」
「アイトルフにいたっては末期的です」
「ユーグの言葉のほうがよほど失礼に聞こえるけど」
「しかし、それが現実です」
 と、ユーグ。

基本的に一文を一段落として書くが、以下のようにすることもある(最近はあまり見かけない)。

「彼が問題だ」と、男は言った。
「しかし、私はそう思わない」

段落の表示(改行について)

基本的に、常に詰めて書く。

あえて演出のために、特定の行の前後を空白の行にすることはある。

 ここまでなのか?
 いや、違う。

 ドクン。

 世界が、暗転した。
 あらゆる存在の動きがいったん止まり、沈黙と闇が世界を支配する。

ケータイ小説の場合、改行(空白行)を多用することがよく見かけられるが、小説の作法としては実は間違い。

フィーチャーフォンの場合、表示が見づらいので仕方ないかもしれないが、ほどほどにしよう。

二倍ダーシ(二倍ダッシュ)「――」や三点リーダー「…」の使い方

沈黙や言葉に詰まったシーンを表現するダーシ「―」や三点リーダー「…」は、二文字分をつなげて使う。

「なぜ――」
「どうして……」

地の文の文末でで使う場合、句点「。」をつけるかどうかは人それぞれ。

 これでいい……。

これらをさらに二倍につなげたり、文の前後に使ったりすることもあるが、読みづらくなったり、効果が薄くなったりするので多用は避ける。

「――なぜ――」
「どうして…………」

こころの声

( )を使ったり、段落の先頭に「――」を使ったりと、人それぞれ。

(どちらへ進むべきか?)
 ――危なかった。
 一歩間違えば、この相手だけではない、この学園そのものを消し飛ばしていたかもしれない。

用字用語の統一

特に漢字の表記ゆれをなくし、基本的に同一の作品内では統一する。

例としては、「つづく」を「続く」と書くか仮名書きのままにするかといったこと。

論文などとは異なり、すべて厳密に一致させる必要はないが、ある程度は統一するのが普通。

!や?

「!」(エクスクラメーションマーク、ビックリマーク)や「?」(クエスチョンマーク、はてな記号)は、単独で使う場合は全角で表記する。

「!?」や「!!」など重ねる場合は、半角で書くことが多い。

ただし、そもそも後者は、純文学などお堅い小説ではほとんど使われず、ライトノベルで多用される。

句読点

読点「、」は、つけすぎない。まったくつけないのも読みづらいが、基本、少な目にするという意識で書く。

窓から漏れる薄明かりの中でも輝くような微笑を、隣にいる男に優しく向けた。

読みづらい例

窓から漏れる、薄明かりの中でも、輝くような微笑を、隣にいる男に、優しく向けた。

〝 〟(ダブルクォーテーション)

小説では、地の文でカッコよりも〝 〟を使うことが多い。

 霊力を抑える黒縁の眼鏡〝アーティファクト〟は、一瞬にして消し飛んだ。

ただし、ブラウザによっては行頭・行末で禁則処理してくれないので、ウェブで公開する場合は使わずに、通常のカッコなどを用いたほうがいいかもしれない。

縦書きか横書きか

日本語の小説は、基本、縦書き。

しかしウェブでは縦書きに無理があり、また最近では縦書きは読みづらいという人が増えてきているので、特に縦書きか横書きかを意識する必要はない。

文中の数字

通常漢数字で書く。

単純な数字を表記する場合、「百」や「十」は使わず「一〇〇」、「一〇」といった書き方をする。

123450

一二三四五〇

ただし、横書きの場合はかえって読みづらいので、アラビア数字で書くこともある。

また、一桁の数字ならば全角のアラビア数字を使うことも多い。

これらは、場合によりけり。

 相対距離は四五〇〇メートルだ。

アルファベット

アラビア数字と同じく、一文字なら全角で、複数なら無理に縦書きに合わせず、横書きにすることが多い。

彼は、Aといえば〝apple〟と簡単な暗号をつくることにした。

最後に

脚本は好きなように書けばいいが、小説の場合はかなりの程度、書き方(文章体裁)が決まっている。

上記のことは基本中の基本。これくらいは守って当たり前という意識で書こう。

なお、ケータイ小説や電子書籍ではいろいろな書き方があるのでこの限りではない。

小説

Posted by takasho