[つばさ] 最新話を投稿:第三章 再会 第三節――ファンタジーのオリジナル長編小説

最新話を『小説家になろう』に投稿。

(冒頭部分)

 気分を変えたかった。
 そこでバルコニーへ出て仕事を執り行おうとしたのだが、これは完全に裏目に出てしまった。
 あまりにも天気がよすぎる。
 抜けるような青い空と風に揺れる緑豊かな木々を見ていると、自分はなぜこんなにもくだらない執務にとらわれているのかと、さらに憂鬱な気分にさせられる。
「また愚痴が出そうですな」
「先手を打たないでくれ」
 他人事のようにオトマルが笑っている。もっとも仕事の量だけを比べれば、彼のほうが多いくらいなのだが。
「そんなに気分転換したいのなら、例の弓兵隊の訓練でもご視察なさいますか」
 フェリクスの瞳がぎらりと輝いた。
「どこでやってるんだ? どこまで進んでいる?」
「西の平原です。新しく徴兵した分も交|(ま)ざっているのでまだまだですが、それなりの形は出来上がりつつあります」
「|訓練の交代制|(、、)を導入したんだったな」
「一般の兵士たちは、普段それぞれ自分の仕事を抱えております。一度にすべての兵のすべての訓練を行うのは困難なので、朝・昼・夕の三交代制にしたのです」
「兵士たちの生活を考慮しつつ、全体として訓練の量を増やすことができるわけか」
「それだけではありませぬ。一度に長時間の訓練をすることがないので、兵士たちも集中力を維持しやすいのです。フェリクス様もおわかりでしょう?」
「確かに長い間椅子に座っていては、嫌にもなるというものだ」
 ――しまった、余計なことを言ったか。
 と、オトマルが顔をしかめている前で、フェリクスは肘掛けに手をかけた。
「じゃあ、さっそく行こう。いや、行かなければならん。非常事態になるやもしれぬのだ。こんなところに座っている場合ではない」
「はあ」
 こじつけくさい理由をつけてフェリクスは椅子から立ち上がり、すぐさま獲物を見つけた狼のような目で小走りに駆けていく。

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