[つばさ] 最新話を投稿:第五章 真実 第五節 三――無料で読めるファンタジーのオリジナル長編小説
(冒頭部分)
「ノーラ様……」
――ああ、そうか。
ベアトリーチェはひとり、納得していた。
罪を負って生きていたのはアリーセだけではなかった。ノーラも同じだった。
――いや、違う、そうじゃない。
こころの中で、ベアトリーチェは自身の考えをすぐさま否定した。
きっと誰しもが、なにがしかの罪を負いながら人生という道を歩んでいる。
誰も完璧ではない、誰も間違いを犯さないことなんてない。
程度の差こそあれ、誰もが自身のうちに罪の意識を秘めている。
自分も、そして隣にいるヴァイクも。
その白翼の彼は、どこか悔しげに己の拳を見つめていた。
「どうして、人は生きるんだろうな。自分の罪にずっと苦しんでまで」
「すごいことを聞くのね。私に答えられるはずがないじゃない」
涙をぬぐうと、なぜか怒ったような顔でノーラはヴァイクを睨んた。
「生きて償いきれない罪なら死んで詫びる――それは本当にいけないことなのか?」
「そう言うと思った。これだからガキは……」
吐き捨てるように言うと、ノーラは立ち上がって男の眼前にまで迫った。
「罪が償える償えないが問題じゃないの! 償おうとすることそのものが大切なのよ。たいしてそれもしていないくせに生意気を言わない!」
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