[つばさ] 最新話を投稿:第二章 敵 第三節――ファンタジーのオリジナル長編小説

最新話を『小説家になろう』に投稿。

(冒頭部分)

 今日は、何か空気がおかしい。
 空は晴れ渡っているのだが、雰囲気がどんよりと重い気がする。それというのも、ヴァイクとリゼロッテの様子が、あの夜以来おかしいせいだった。
 ヴァイクは、何か考え事をいしているかのように黙っていることが多くなった。
 リゼロッテのほうは、あまり彼に近づかなくなった。体調はまだすぐれず、さらには疲れがたまってきたせいでその足取りは重い。
 ――ふぅ。
 そんな二人に挟まれていると、自分まで暗い気持ちになってくる。ベアトリーチェは彼らに悟られないように、そっとため息をついた。
 何か、この青い空がもったなく思える。せめて曇天だったら、自分たちの気持ちにしっくりとくるのに。
 理不尽にすぎない思いを込めて空を見上げていると、鳥の集団か何かが隊列を組んで飛んでいくのが見えた。
 そこから一羽が離れて、こちらのほうに降りてくる。
 ――なんだろう?
 と思っている間に、それが一気に急降下してきた。
 見る見るうちに近づいてきて、いけないと思ったときにはもう、その紅色の翼と手に持った剣とが、はっきりと目に映るほどになった。
「ヴァイク!」
 白翼の彼は、言われてからようやく気づいた。
 ベアトリーチェの声に危険なものを感じ、反射的に剣を引き抜いて周囲の様子を確認する。
 ――上か!
 とっさに剣を上段に構えつつ、飛び上がった。
 すぐに来る激しい衝撃。剣を取り落としそうになるのを必死にこらえ、体を後方へ逃がしつつ、なんとかして相手の剣を受け流そうとする。

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