[牙] Chapter 5 episode: Revival――オリジナル小説(ライトノベル)の連載:最新話
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(冒頭部分)
春だというのに過ぎゆく風は冷たく、救いを求める内面の泉を徐々に凍らせていく。
「俺のこころは、冬に逆戻り――」
校舎屋上の手すりにもたれかかった〝変態〟こと華院 蓮は、半泣きになりながらブツブツと独り言をつぶやいていた。
「寒くて、寒くて、寒くて。もう、誰も信じられない――」
あまりに痛々しく、見ていられなくなった他の生徒たちは、ひとり、ふたりと姿を消していった。
陽気のいい日の昼休みだというのに、校舎の屋上は閑散としていた。それがさらに寂寥感を助長する。
「俺は風になりたい。風のように自由に、なんのしがらみもなく――」
誰もかかわり合いになりたくないほど自分の世界に完全に入ってしまった蓮に、あえて近づく影があった。
「何、ポエミーになってんだよ、蓮」
「空はこんなに青いのに、俺のこころはネイビーブルー――」
「重傷だな……」
幼なじみ――腐れ縁――の圭ですら引いてしまうほど、今の蓮は〔飛んでいた〕。
「もう気にすんなよ、誤解で済んだじゃねえか」
「ゴカイが誤解して釣りの餌になる――」
「…………」
(つづきを読む)