[つばさ] 最新話を投稿:第八章 終わりの始まり 第四節――無料で読めるファンタジーのオリジナル長編小説
(冒頭部分)
ランプの灯りが、ゆらりゆらりと揺らめく。
芯の焦げる匂いが時おり漂い、淡い色に照らされた室内は独特の不自然な雰囲気をまとっている。
場の空気は明らかに焦れていた。最も肝心な人物が未だ訪れないからだ。
「いい気なものだな、ゴトフリート殿は」
アイトルフ侯ヨハンが苛立たしさを隠そうともせず、円卓の上をコツコツと叩いている。
それを咎(とが)める者はない。皆、気持ちは同じだった。
「カセル侯は、もうすでに皇帝になったつもりでいるのではないか」
いつもは温厚なブロークヴェーク侯ゼップルでさえも、らしくなく怒りをあらわにしている。
さすがのフェリクスも、焦れる気持ちを抑えることができなかった。
――早く会いたい。
その思いがこころを揺さぶる。
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