[つばさ] 最新話を投稿:第六章 雌伏のとき 第六節――無料で読めるファンタジーのオリジナル長編小説
(冒頭部分)
暗闇の中で、たった一本のろうそくの炎が不安げに揺らめいている。
弱々しいその光源がそこにいる人物を、時おり、わずかばかりに照らし出す。
決断の時はいよいよ近づいていた。もはや、残された時間は少ない。悩み、迷ったままついにここまで来てしまった。
――自分が止めなければならない、この間違った流れを。
その思いは、以前からずっとあった。これからのことを思えばこそ、自分の手を汚してでもやらなければならぬことがある。
だが、決めきれないまま時間だけが過ぎ、逡巡したあげくに結局は何もできなかった。
そうこうしている間に戦いへの流れはいやがおうにも強まり、もはや自分ひとりではどうにもできない領域に差しかかってしまった。
それもこれも、自分の意志のなさが招いたことだ。
何を為すべきかはわかっていた。
その方法もあった。
しかし、どうしても決心だけがつかない。
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