[つばさ] 最新話を投稿:第四章 さよならの言葉 第一節――ファンタジーのオリジナル長編小説

最新話を『小説家になろう』に投稿。

(冒頭部分)

 自分のこころの内を象徴するかのように、空はどんよりと曇っている。
 ベアトリーチェは歩を進めながらも、その目は周囲の景色を見てはいなかった。
 ――どうしても、神殿の対応のことが気になる。
 なぜ、神官が真っ先に逃げたのか。
 なぜ、聖堂騎士団を動かさないのか。
 ここに来るまでいろいろな人たちに話を聞いたが、神殿が翼人の対応のために動いたという噂はついぞ耳にしなかった。
 ――アルスフェルトやジャンの村以外にも、翼人の被害に遭っているところはかなりあるというのに。
 余計に、神殿がなんの反応も示さない理由がわからなくなってきた。
 セヴェルスの言葉が思い起こされる。
〝結局、役人も神官も自分たちのことしか考えてないってことだ。都合が悪くなれば、それ以外のものを平気で切り捨てる〟
 本当にそうなのだろうか。仮にそうだとしても、神殿側の〝自分たちのこと〟とはなんだろう。
「どうした?」
 ひたすらにうつむいて歩くベアトリーチェを心配して、ヴァイクが声をかけた。
「いえ、神殿のことで……」

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