[牙] Chapter 5 episode: Safe House 3――オリジナル小説(ライトノベル)の連載:最新話
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(冒頭部分)
服についた汚れを払っている蓮は放っておいて、一同は今度こそ玄関から上にあがった。
「ああ、みんな。〝彼女〟についてって。私はあとから行くから」
「彼女って……人魂?」
「うん」
卒倒しそうになった美柚をめいが支え、空中をゆらゆらと揺れる人魂こと『はるひ』さんは、廊下を先へと進んでいった。
ぞろぞろと一同がそれに従う。その最後尾についた美柚は、後ろからぶつかってきた蓮を報復で蹴飛ばした。
まるで大名屋敷のような廊下をどんどんと奥へ進むと、やがて真っ白な障子戸で囲まれた居間に通された。
机さえないそこに皆が車座になっても、最初のうち誰も口を開こうとしなかった。場の空気が悪いのは、明らかに不機嫌な顔でいる蓮と洋太のせいであった。
「うん?」
ふと視線を感じ美柚が庭のほうを振り返ると、〈唐傘(からかさ)〉に一つ目のついた〝何か〟が、きれいな障子に半身を隠してじーっとこちらを見つめていた。
「見られてる……私、見られてる……」
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