[牙] Chapter 2 episode: Confusion/ Consideration――オリジナル小説(ライトノベル)の連載:最新話
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(冒頭部分)
結界が解かれた。
その現実に、複雑な思いが胸中で渦を巻く。
脅威を感じると同時に、こころのどこかでうれしく思う気持ちまである。
こころの整理がつかないままに、響子は文学部の部室へ急いだ。
資料室にある結界は、強力なもののはずだった。それが、いとも簡単に破られるとは。
――最近、変なことばっかり。
不確定要素が確実に増えた。なんでこう短期に一気に、と悪態をつきたくなるが、これも必然なのかもしれない。
そんなことより、
――早く伝えなければ。
あそこは、あの人にとって大切な場所。かならず守り通さなければならないはずだった。
しかし、あれがあの人のこころを縛ってもいる。
職員室で、愛おしげにブレスレットを見ていた姿を思い出す。
――あんなもの、なくなってしまえば。
その気持ちは思いやりなのか、嫉妬なのか。
「!?」
余計なことを考えている間に、もうひとつの結界まで破られたのを感じる。
――これで、もう。
その事実に安堵する自分が嫌だった。
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