[つばさ] 最新話を投稿:第三章 再会 第二節――ファンタジーのオリジナル長編小説

最新話を『小説家になろう』に投稿。

(冒頭部分)

 人はなぜ争うのか、と問うたところで実際に争っている現場では無意味だ。
 翼人と人間はなぜ対立するのか、と問うたところで答えが出るはずもない。
 なぜなら〝翼人〟と〝人間〟という形に分けて考えること自体、対立と闘争の前提となっているからだ。それぞれ違うといえば違うのだから、区別はわきまえる必要がある。
 だが常に、区別は差別へと転化しやすい。互いの違いをわきまえつつ、互いを認め合うことができるような人物は、翼人にも人間にもほとんどいなかった。
 すなわち、この世界における差別と闘争とは必然なのだ。
 それをなくすにはどうしたらいいのかだって?
 方法は二つある。
 それぞれがより高度な次元へ己の精神を高めるか、もしくはすべてが滅び去るか――。何もなければ、そこになんらかの問題があるはずもない。
 あらゆる存在の無は、あらゆる問題、あらゆる限界の無をも意味する。
「しかし、それはあらゆる幸福、あらゆる喜びの無をも意味するのだがな……」
 ゴトフリートは、目の前にある本を見るともなしに眺めながら独りごちた。
「何かおっしゃいました?」
「いや、なんでもないよ」
 相変わらず耳のいいルイーゼに苦笑しながら、ゴトフリートは顎ひげを撫でた。
 書状を片付けている彼女の髪が、半分だけ開いた窓から吹き込むやわらかい風に揺れている。黄金のひたすらにまっすぐな髪は、銀の水差しに反射した光を浴びて、ただただ美しかった。

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