[つばさ] 最新話を投稿:第九章 始まりの終わり 第四節――無料で読めるファンタジーのオリジナル長編小説

最新話を『小説家になろう』に投稿。
アットノベルスにも)

(冒頭部分)

 先の会議とはまた違った、刺すような空気が議場には流れていた。
 選帝会議は混乱の極みにあった。
 この会議も二日目に突入し、普段ならそれぞれが互いの腹を探りつつ本題に入るきっかけを得ようかと考える頃合いだったが、そんな平和な目論見はもろくも崩れ去った。
 今も、外から怒号や悲鳴がはっきりとこの場にいる者の耳に届いてくる。
 フェリクスでさえ、飛行艇が数隻も墜落した際の振動と爆音にさらされたときには、さすがに冷や汗が出るのを抑えきれなかった。
 諸侯の中でも、アイトルフ侯ヨハンとブロークヴェーク侯ゼップルの混乱はいっそうひどかった。
 元より、二人とも戦というものに慣れていない。それが、あまりに想定外の事態に陥ったものだから、まったく平常心を失ってしまっていた。
 だが今、それを諫める者はなかった。なぜなら皆、程度の差こそあれ大きな衝撃を受けていることに違いはなかったからだ。
 それは、ある程度のことを予測していたギュンターやライマルでさえ例外ではない。まさか、ここまでのことを企んでいる人物がいようとは思いもしなかった。
「なっ、なぜ、こんなことになったのだ!? あの翼人どもはなんなんだッ!」
 ヨハンが、悲鳴じみた甲高い声を上げる。不測の事態に混乱するばかりで、体裁を取りつくろう余裕さえ失っていた。

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