[牙] Chapter 2 episode: Watchdog of Underworld 3――オリジナル小説の連載:最新話
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(冒頭部分)
相手は、狭いところでは思うように動けないことを悟ったか、間接攻撃に切り換えた。次から次へと火の玉を放ってくる。
よけることでいっぱいいっぱいの蓮たちは、対応することができない。周囲は火の海になりつつあった。
「華院、このままじゃやばいぞ!」
「言われなくてもわかってる」
――美柚は。
よけるのではなく、ものの見事に拳で消し飛ばしていた。立ち位置にまったくブレがない。
「…………」
「こっちは任せて!」
「……任せた」
自信満々に言う美柚にかけるべき言葉が思いつかず、ただ素直に答えた。
――どうするか。
相手の性質からいって、きっと完全に倒さないかぎり再生して戦いが長引くだけ。
――無尽蔵の霊力か。
現実には有り得ない。しかし、通常の攻撃では元に戻ってしまう以上、一気に叩くしかなかった。
「おい、いけ好かない奴」
「東賀だ。東賀 甲一」
「〔東一〕、一瞬でいい、奴の隙をつくれ」
「変な呼び方するな!」
「できるのかできないのか」
「……少しでいいなら十分可能だ」
「じゃあ、やれ」
「こいつ……!」
いちいち癇に障る言い方に反発したくなるが、今はそんなことをしている場合ではないことは甲一もわかっていた。
手早く術式を組み上げていく。
完成したそれは、炎をまとった翼の形を成していた。
その両翼がケルベロスを覆うようにして広がっていく。
炎に炎で返されるとは思っていなかったか、三つある首のいずれもが明らかにたじろいだ。
好機だ。
(つづきを読む)