[つばさ] 最新話を投稿:第十章 すべての終止符と喜びと 第四節――無料で読めるファンタジーのオリジナル長編小説
(冒頭部分)
戦とは恐ろしいものだ。
どんなに綿密な作戦を練ったとしても、たったひとつの不確定要素によって戦局ががらりと変わってしまうこともある。そして、すべてが悲しいほどあっさりと無駄になっていく。
軍を含めた組織というものは、ひとりひとりの人間という細部がつながり合って全体を構成しているひとつの生命体のようなものだ。
思うように動かせるようで、実は思うままにならないところが多々ある。人間が自身の体を完璧に使いこなすことはできず、また病気になったときにどこが悪いのかよくわからないこともあるように。
カセル侯軍の動きは鈍かった。
――やはり、帝国に対して仇なすことに抵抗を感じている兵が多い。
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