[牙] Chapter 3 episode: Victims 1――オリジナル小説(ライトノベル)の連載:最新話
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(冒頭部分)
昼の教室は賑やかで、笑い声が絶えない。方々で十代特有の活気があふれている。
というより、明らかに〔荒れていた〕。
「〝〈女王(クイーン)〉〟に近づくなっつってんだろ!」
「クイーン?」
「美柚ちゃんのことに決まってる」
相手の言葉に、蓮は鼻で笑った。
「フッ、お前らはばかか。奴はそもそも女じゃない」
「何ィ?」
「猛獣だ」
「…………」
「アレは、人外の生物だ。クイーンという人間のための呼称はふさわしくない。猛獣の〝メス・リーダー〟というなら納得してやる」
直後、蓮の体が飛んだ。
周りを取り囲んでいた武志団の面々を巻き込んで壁まで跳ねていく。
それを見下ろす一対の冷たい目。
「猛……獣……」
「まだ言う!?」
「背後からの攻撃は卑怯だ!」
「そういう問題か……?」
二次被害を受けた武志團の面々が、起き上がりながら蓮を睨んだ。
ここに、武志團のリーダー格である前田 大樹の姿はなかった。なぜか最近は休みがちで、もっぱら〝第二派閥〟である芦山を中心に蓮にからんでいた。
この学校に限らず今どき、いかにもな〝不良〟はいないのだが、周りとうまくやっていけないはみ出し者はどこにでもいる。そんな連中をうまくまとめていた。
実質的なリーダーである大樹にそこまでの狙いがあるのかどうかはともかくとして、エネルギーの余った連中を武志團としてまとめることで暴走を防いでいる面は確かにあった。
「まったく、狂信者は困る。お前ら、催眠術でも受けたんじゃないのか」
「うるせえよ、失礼なこと言うな」
「騎士団は礼儀を知らん。騎士なら騎士らしくマナーを守れ」
「武志團だ! つか、てめえに礼儀を言われたくねえ」
それはそうだ、と周囲から同意の声が上がる。
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