[つばさ] 最新話を投稿:第一章――ファンタジーのオリジナル長編小説

最新話を『小説家になろう』に投稿。

(冒頭部分)

「どうしてこんなことに!」
 アーデは自室に戻るなり、頭をかきむしった。こういった仕草は兄と呆れるくらいにそっくりなのだが、こちらもまるで自覚はない。
「はぐれ翼人が人間の町を襲うなんて、さすがに驚きですね」
「ユーグも、はぐれ翼人の仕業だと思う?」
「ええ。ですが、普通の徒党とは違うでしょう。アルスフェルトほどの町を襲っても返り討ちに遭うのがおちですし、そもそもそんなことは考えもしないでしょうから」
「そうよね、はぐれ翼人は生きるのに必死だから……」
 では、アルスフェルトの町を襲った翼人の集団とはいったい何者なのだろう。どこかの強い部族だとも考えられない。彼らには、人間の都市を狙う理由がない。
「じゃあ、どうしてこんなことに……」
 アーデは、黒檀の机に両手をついてうつむいた。人間と翼人の対立だけは避けたかった。それがよもや、まさにそのことが起きようとは。
「レベッカに聞いてみようか」
「そうですね」
 ユーグの同意を待ってから、アーデは呼びかけた。
「レベッカ、いる?」
「ここに」
 声は、天井のほうから聞こえてきた。

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