[つばさ] 最新話を投稿:第九章 始まりの終わり 第七節――無料で読めるファンタジーのオリジナル長編小説
(冒頭部分)
雲行きが怪しくなってきた。
晴れ渡っていた空の西のほうに暗雲がたれ込めている。まるでこれからの帝都の行く末を暗示しているかのようで憂鬱な気分になる。
騎士ヨアヒムは、ある人物を必死になって捜していた。
それは誰あろう、みずからの主君たるノイシュタット侯フェリクスだ。あの宮殿における混乱の後、秘密の抜け道に入ったまではよかったものの、そこで主や仲間とはぐれてしまった。
まったく明かりのない中を走っていたから仕方のない面もある。それでも、この大事なときに限ってこんなことになってしまうとは、騎士としてあまりにも不甲斐なかった。
――それにしても、まさかあの抜け穴に分岐路があったとは……
知らず知らずのうちに間違った方向へ進んでしまい、気がついたら仲間の声や足音は聞こえず、自分はひとりになってしまっていた。
かといって、引き返すことができるはずもない。
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