無料のおすすめゲームエンジン一覧:Unityなどゲーム開発環境を比較[まとめ]

2024 年 5 月 20 日

クロスプラットフォーム対応かつ無償=基本無料で使えるゲームライブラリ(ゲーム開発環境)について紹介。

おすすめ

Unity

表示形式:2D/3D
ライセンス:プロプライエタリ(非オープンソース)
料金:基本無料(実質有料?)
対応プラットフォーム:大半(家庭用ゲーム機も)
対応言語:C#
開発環境:あり(オールインワン)
情報量:最多
開発ペース:高
GUIコンポーネント:あり
GUIエディタ:あり
シェーダ対応:あり

言わずと知れた総合ゲーム開発環境。カジュアルゲームの分野では、事実上の標準といってもいいくらい。どのライブラリを使うか迷ったら、とりあえずこれを選ぼう。

といっても一般にまで知れ渡ってしまったライセンス料金のゴタゴタで、かなり悪いイメージがついてしまった感がある(下記参照c)。

元々は3Dゲーム開発用のものだったが、現在は2Dゲーム向けの機能も充実している。

英語でも日本語でも圧倒的な情報量を誇る。

開発環境はオールインワンなので、エディタをインストールすればすぐに開発を始められる(環境構築が容易)。

対応プログラミング言語は人気のC#で、多機能かつ静的型付けなので開発しやすい反面、初めからC#を覚えなければならないので、初心者にとっての難易度は高い。元々はBooScriptというJavaScript的な独自言語も対応していたが、現在はC#のみで他に選択肢はない。

Asset Storeと呼ばれる公式ストアで提供される素材やライブラリも豊富で、インディゲーム開発者が欲しいと感じるようなものはたいてい手に入るだろう。

欠点

初心者向けではない

欠点というのは語弊があるが、よく誤解されているのが「初心者向け」であるかのように思われていること。実際にはプログラミングの基礎はもちろん、ゲーム開発の基本、そして何より中級者向けの言語であるC#の習得が必須となっている。

ということは「オブジェクト指向」と呼ばれる設計思想の理解も必要で、しかも今でこそゲーム開発において主流だがやや特殊な面もあるコンポーネントベースのデザインパターンも把握していなければならず、実は敷居が高く、挫折する人も多い。

Unityという開発環境はあくまで「プログラミングとゲーム開発の基本」がわかっている人にとっては「単純なコーディングの量を減らせる」だけであって、けっして楽に開発できるわけでも誰にでも習得できるわけでもない。なぜか「プログラミングしなくてもゲームをつくれる」という言葉がひとり歩きしているが、根本的にRPGツクールやWolf RPGエディターのようなツールとはわけが違うのだ。

ある程度、ゲームプログラミングに慣れた人でさえ手こずる面もあるため、むしろまったく初心者向けではない。初めのうちは間違いなくHSPのようなビギナー向けを意識してつくられた開発環境を使い、慣れてきたらUnityやUnreal Engineといった本格的なものに移行するというのが最も妥当なやり方だろう。

ライセンス料の問題

ライセンスは使用者(ユーザー)単位。企業向けプランももちろんある。

以前は、ゲームの売上が一定額に達するまでは無料のまま使え、その後も定額のライセンス料を払いさえすれば売上やビジネスモデルに関係なくほぼ自由に使うことができた。

しかしUnity社は2023年に突然規定を改定するとし、「無料配布でもゲームクライアントのインストール数に応じて課金する」モデルを導入しようとして大炎上した。

その後同社はあわてて謝罪したものの悪名高いその部分は撤回せず、結局はその条件が緩和されただけ。

ユーザー側からすれば一定額のライセンス料をすでに支払っているわけで、それにもかかわらずゲームの販売・配布形態によってさらに課金されるというのは、料金の二重取り以外の何ものでもない。

しかも、最安の有料プランでも2024年5月現在、年間契約で302,940円もかかる。しかも年単位の契約しかなく、支払いは月単位にできるものの他に選択肢はない……

Unityは無料でも多くの機能が使えるもののデメリットもいろいろあり、個人の開発者でも大半がなんらかの有償プラン(Unity PlusやUnity Pro)を選択しているのが現状だ。

遊びや検証目的で使うのならともかく、業務用ならば「基本有料」と考えておいたほうがよく、個人や小規模ディベロッパーにとってはなかなか悩ましいところだ。

アセットストアで提供される素材やライブラリも有料で提供されていることが多いので細々とおカネがかかり、いつの間にかそれなりの金額になっていたということもある。

いずれも大手企業の場合はたいして気にするような額ではないものの、以上の点からしてもやはり基本有料と考えておいたほうが無難だ。

今後に向けて気がかりなのは、契約体系が以前はシンプルだったのだがやや複雑になってきたことだ。Unreal Engineが契約内容を簡素化し、他にもさまざまな無料エンジンが増えている中で非オープンソースであることも含め、Unityだけやや時代の流れに逆行している感がある。

ネイティブコード非対応

C/C++やRust、Go言語といったネイティブコードには何も対応しておらず、処理速度にはおのずと限界がある。

ネイティブコードでつくられたライブラリ(LIBやDLL)をC#の機能を使って呼び出したり、Windows環境ならば.NETの「.NET Native」という機能を使ってプリコンパイルしたものを利用したりする方法もなくはないが、非常に面倒でUnity単体では完結しなくなってしまい、おそらくはサポート対象外。

こればかりは事実上、どうしようもないと考えたほうがいい。

非オープンソース(プロプライエタリ)

エンジンもエディタもソースコードはまったくの非公開なので、Unity側に不具合があっても外部の開発者による特定は不可能。

有償でのソースコード公開もありうるようだが、あまり現実的でない。

Unreal Engene

表示形式:3D
対応プラットフォーム:大半の環境
ライセンス:オープンソース(独自)
プログラミング言語:C++、Blueprint
開発環境:あり
情報量:多
開発ペース:高

大企業でも採用することのある有名ゲームエンジン。グラフィックの美しさに定評があり、ハイエンドを追求するタイトルなどでも使われることが多い。

順調に開発を重ね、確実に進化をつづけている。最近ではフォートナイトをベースにしたゲームを構築するための「Unreal Editor For Fortnite」という開発環境も提供されている。

実質、企業向けの開発環境だがオープンソースで公開されている。

開発言語はハイエンド向けだけあってやはり基本的にC++であるため、その時点でかなり敷居が高くなっているが、BlueprintというノードベースのGUIでスクリプトを構築できるという便利な面もある。

Unreal Engine 5になって、さらに「とりあえず動くものをつくる」のが容易になってきた。

Unityほどではないが日本語の情報もそれなりに増えてきたのも大きい。

全体的に、昔に比べれば個人が手を出しやすいような環境になってきた印象だ。

ライセンス料

開発したタイトルの売上が一定額以下ならば無償のまま使うことができる。ただ、それは裏を返せば一定額以上(100万ドル:約1億5千万円)になるとかならずライセンス料を支払わなければならないことを意味する。

しかもUnityとは異なり、開発環境の使用料(ライセンス料金)を開発者の数の分支払う形式ではなく、ゲームタイトルの総売上の5%をロイヤルティとして支払う形式のため、売上が増えれば触れるほどその支払額は増えることになる。

ここでポイントとなるのが、あくまで「売上」基準であること。もしプロジェクト自体が赤字であったとしても売上が100万ドルを超えたらロイヤルティを支払わなければならないため、場合によっては売れれば売れるほど赤字幅が広がっていくという最悪の循環に陥りかねない。

この点は大企業でもAAAタイトルのような大規模プロジェクトで採用するにはためらわれる部分で、ましてや資金の乏しい中小企業ではなかなか難しい面もある。

Cocos Creator

表示形式:2D・3D
ライセンス:無料のオープンソース(エディタも)
エディタ対応プラットフォーム:Windows、macOS
対応プラットフォーム:iOS(iPhone/iPad)、Android、Windows、macOS、Linux、Web(HTML5)、Nintendo Switch
対応言語:TypeScript、JavaScript
開発環境:あり
情報量:中
開発ペース:高
GUIコンポーネント:あり
GUIエディタ:あり
開発元:Chukong Technologies(中国)

2Dゲームの開発環境としては、昔からそれなりに知られているもの。

さらに昔から存在する「Cocos2d-x」(後述)というネイティブコードに対応したゲームライブラリをベースエンジンに採用しているが、Cocos Creator自体はそれとは似て非なるものでソースコードの互換性はない。

2Dゲーム開発に必要な機能が一通りそろっており、専用エディタ(IDE)を使ったGUIの構築も可能。

開発環境はオールインワンなので、エディタをインストールすればすぐに開発を始められる(環境構築が容易)。

物理エンジンやマップチップなどの有名な外部ライブラリや、TexturePackerといったツールのファイル形式にも標準で対応しており、これさえあれば大半のジャンルのゲームを開発することができる。

TypeScriptに対応しているため静的型付けで開発しやすく、ここがDefold に勝る点ではあるものの、Cocos2d-xとは異なりネイティブコードやLuaには対応していない(JavaScriptの直書きはOK)。

Unityにない強みとしては、エディタを含めてすべてオープンソースであること。いざとなったら自分でエンジンやエディタに新機能を追加したり、カスタマイズしたりすることも可能。

ゲームエンジンのAPIはネイティブコードに対応していないが、「Native Extention」と呼ばれる各環境に特化した機能をC++などで追加することはできる。

Unityとは比較にならないとはいえ、日本語の関連情報もそれなりにある。

中国の企業であるChukong Technologiesが開発とサポートを主に担っている。

3Dゲーム向けの機能も存在する一方、残念ながら今のところまだ物足りなさがあるのであまり期待しないほうがいいだろう。

欠点

ネイティブコード非対応

既出のとおり、OSネイティブの機能などを呼び出すために使うNative ExtentionというAPIは存在するものの、ゲームエンジン側のAPIをC/C++などで書くことはできない。ここがCocos2d-xと大きく異なるところのひとつ。

C/C++やRust、Go言語といったネイティブコードに対応していないため処理速度には限界があり、ネイティブAPIの機能を使いたいときなどに問題が出る(というよりどうしようもない)。

ベースが同じくオープンソースの、C++でコーディングができるCocos2d-xであり、内部ではCocos Creatorのファイルをそちらで読み込む形をとっている。

ユーザーがみずからそれを制御するための拡張機能(Native Extention)も公式に提供され、実はC++で書こうと思えば書けることは事実で、OSネイティブの機能を独自に使うことも可能ではある。

しかし実際にはやれることが限定的で、しかもCocos2d-xとCocos Creatorでは仕様が異なり、APIも別々であるせいで非常にコーディングしづらい。そもそも、Cocos2d-x側でCocos Creatorの使用を想定しているわけではなく、またCocos Creator側でもC++に対応しているわけではまったくない。それはエディタも同じことだ。

この機能を利用したという採用実績もほとんど聞いたことがなく、現実的には厳しいと言わざるをえない。

先行きが不透明

他の箇所で指摘しているようにロードマップが示されていないことやチャイナリスクの問題もあるが、最近「SDKBOX」というサードパーティ製サービスとの仲立ちをするための無償ライブラリが開発中止になってしまったことからもわかるとおり、相変わらず先が見通せない部分がある。

特に無償SDKの終了は、モバイル広告を組み込む機能が失われたことを意味するだけに、実は結構痛い。

Chukong Technologiesという中国の中小企業が中心になって開発していることもあり、もはや今後はその会社しだいといえなくもない。

ただ、2022年になってNintendo Switchに出力対応するなど、コンスタントに更新は続けられている。

情報の不足

中国製のため、日本語の情報だけでなく英語での情報もやや少なめ。とはいえ、他のライブラリ(Unityを除く)に比べればましかも。

チャイナリスク:中国のライブラリ

そのほとんどが中国で開発されているため、セキュリティ面・知的財産権(著作権)の面で一定のリスクがあるとも考えられる。

正直、昨今の地政学的リスクを考えると、共産党政権の「鶴の一声」で状況が激変する可能性も無きにしもあらずで、オープンソースだからといって安心はできない。中国国内でつくられた著作物の著作権を保証しているのは、あくまで中国政府だからだ。

CocosはCocos2d-x時代から歴史が古く、すでに10年ほどの歴史があって現在までこれといって問題が起きたことはないものの、相手が中国だからこそ何が起こるかわからない怖さがある。

実際に中国国内では、海外ゲームの公開が政府によって許可されないという大問題が起きているだけに、オープンソースのゲームライブラリとはいえあまり油断はできないだろう。

よくできたライブラリで伝統があるにもかかわらず、欧米などにおける英語の情報が少な目なのはこうした点が日本以上に敬遠されているせいなのかもしれない。少なくとも日本や米国など、中国以外の企業が業務として利用するには気が引ける部分がある。

頻繁な仕様変更・ロードマップがない

開発速度が速いことはけっこうなことだがAPIの仕様変更がたびたびあって、ユーザー側でも以前のコードを書き換えないとライブラリの更新時にゲームアプリが動かなくなってしまう――といったことがよく起こる。

しかも、Cocos Creatorプロジェクトのロードマップが相変わらずはっきりとは示されておらず、いつ何が起こるのか予測しづらい。

ホビーユースならともかく業務用としては困惑させられる場合も多いため、企業関係者は採用するか否かよく考えたほうがいいだろう。

有料部分もある

エディタも含めて基本的には無償のオープンソースではあるものの、有償のSDKを使ったり、Chuhkong Technologiesによるサポートを受けたりする場合はもちろん一定額の料金が必要となる。

Defold

公式サイト:Defold – Official Homepage – Cross platform game engine
読み方:ディフォールド
表示形式:2D/3D(2Dメイン)
ライセンス:無料の完全オープンソース(エディタも)
対応プラットフォーム:iOS(iPhone/iPad)、Android、Windows、Mac、Linux、Nintendo Switch、Steam、HTML5(Web)、Facebook
対応言語:Lua
開発環境:あり(エディタ利用必須)
情報量:中
開発ペース:高
GUIコンポーネント:なし*
GUIエディタ:あり
クラウド対応:あり(クラウドでのビルド処理)
開発元:Defold Foundation(スウェーデン)

最近、各種エディタやサービスの充実度などから急速に注目を集めている新興ライブラリ(というより統合開発環境)。

Luaコーディング用のテキストエディタやデバッガ、2Dマップエディタ、シーンエディタ、パーティクルエディタ、さらにはアニメーション作成ツールなどもあらかじめ開発環境に組み込まれているので、エディタをインストールさえすればすぐに開発できるという、オールインワンのIDEだ。

一方で、SpineやTiledといった有名な外部ツールのファイル形式にももちろん対応しており、ソースコードをガンガン書いていくタイプのゲームエンジンとしては、かなり優秀といえる。

オープンソース化されてからまだ間もないが、公式サイトのドキュメントは比較的充実している。

元々Avalanche Studiosが開発していたものを、「キャンディクラッシュ」などカジュアルゲームで有名なスウェーデンのKing社が引き継ぎ、その後2020年にDefold Foundationという組織に移管する形ですべてオープンソース化された。

100%完全オープンソースなのが特長で、スウェーデンで主に開発されている。企業が開発したライブラリにありがちな「○○をしたければカネを払え」というのが一切ないので、どんな立場の個人・法人でも比較的気軽に使うことができる。

基本的にすべて、軽量組み込み言語のLuaでコーディングする前提で設計されており、ネイティブコードのゲームではよくある、ゲーム実行中にリアルタイムに値を変更するライブプレビュー機能も初めから存在する。

APIの設計はよくも悪くもシンプルで非オブジェクト指向なのでプロには物足りないが、裏を返せば初心者にはわかりやすくとっつきやすい。

ネイティブアプリのゲームではLuaを使うことはもはや当たり前なので大半の開発者にとって扱いやすく、手っ取り早く開発するには最適な環境といえるだろう。

UnityやCocos Creatorと違っていちいちコードをコンパイルする必要がなく、さくさく開発できるのも特長。

また、さまざまな環境に対応し、主要なデスクトップ・モバイルOSはもちろんNintendo Switch向けにもビルドできる(以前は有料機能だったNintendo Switchへの対応が、2022年11月に無料化されている)。

プラットフォームに応じてエンジン部分をそのネイティブの言語――iOSやWindowsならネイティブコード(C/C++)、WebならJavaScript(HTML5)――で拡張することも可能(Native Extention)。

ただし注意が必要なのは、けっしてDefoldのAPIが各言語向けに用意されているわけではないということ(*現在、調査中)。

どういうことかというと、たとえばLuaで用意されている関数がC++でも提供されているわけではなく、あくまで自分でDefoldエンジンを拡張するためだけの機能なのだ。

ゲーム用のAPIを使いたければ自分でLuaエンジンをネイティブ拡張のコード内で管理し、Luaエンジンを経由して呼び出さなければならない。後述のCocos2d-xのようにメインAPIが正式にC/C++などに対応しているわけではないのだ。

基本的にはやはり、ゲーム内容はすべてLuaで書くしかない。ここは勘違いしないよう注意したほうがいいところだ。

といっても、各環境用のエンジンそのものは軽量で、多くの場合、軽快に動作する。

物理エンジンや有名な外部ツール・ライブラリにも標準で対応しており、これさえあればほとんどのジャンルの2Dゲームを開発することができるだろう。

欠点

よくも悪くも全部Lua

「すべてLua」ということは、ゲームシステムの重要なロジック部分ですらLuaで書かなければならず、言語自体の機能が少なく、しかも動的型付け言語であることを考えると、なかなかに大変。

各プラットフォームのネイティブ言語で書ける「Native Extention」という機能が存在し、場合によっては各OS向けにネイティブコードのC/C++で書こうと思えばできるものの、そのための公式ドキュメントすら整っておらず、情報不足の感は否めない(APIリファレンスですらLua向けのものだけだ)。

非コンポーネントベース

UIなどをつくるための専用ビジュアルエディタは存在するものの、UnityやCocos Creator、そして最近注目されているGDevelopとは異なり、いわゆるビヘイビア駆動開発やコンポーネントベースの設計に対応していない。

つまり、ゲームの大半をコード直書きでやらざるをえないということ。昔はどんなプロジェクトでもそれが当たり前だったが、今実際にやってみると、これはなかなかに面倒で厳しい。覚悟しておこう。

古くさいAPI

APIの設計が驚くほど古いタイプのものになっており、C言語時代のいわゆる「関数に構造体のオブジェクトを常に渡して操作する」形式になっている(要するに擬似的なオブジェクト指向)。

たとえば、text nodeにテキストを設定するには次のようなコードになるわけだが……


gui.set_text(node,text)

昔を知るベテランプログラマーなら懐かしく感じるのではないだろうか。

おそらく、オブジェクト指向がわからない初心者のためにあえて単純な設計にしたのだろうが、プログラミング初心者が初めに学ぶ言語がJavaScriptになった今となっては、かえってわかりづらくなっているようにも思う。

この点は、人によっては大きなマイナスポイントになるかもしれない。

日本語の情報不足

少なくとも英語の基礎的な情報に関しては十分あるが、日本語のそれは非常に少ない。

今後Defold自体の人気が上がればおのずと増えてくるのだろうが、現状、英語を読み進めていく必要がある。

エディタ依存

すべて軽量スクリプト言語のLuaで書くものの、エディタ(IDE)がないことにはビルドも何もできない。

この点については、UnityやCocos Creatorと同じ。

GUIコンポーネントがない

GUIを自分でつくるための“描画用API”は存在するものの、アコーディオンやテキストフィールドだけでなく、ボタンなどの基本的な要素すら標準では存在せず、正直スマートフォンなどの環境ではこれは痛い。

一部でユーザーが開発したDefold用GUIライブラリがあるものの物足りなく、足りない部分は自分でつくるしかないのが現状だ。

GDevelop

公式サイト:GDevelop
表示形式:2D
ライセンス:無料の完全オープンソース(MITライセンス)
開発環境:あり(Web版も)
情報量:少
開発言語:JavaScript
日本語対応:OK
開発ペース:高
GUIコンポーネント:あり(一部のみ)
開発元:GDevelop Ltd.
GUIエディタ:あり
シェーダ対応:あり

最近、急速に注目を集めている2Dゲームライブラリで、スマートフォンでの開発にも対応。Googleの元社員が起ち上げた企業だ。

PC版は無料のオープンソース。企業が開発したライブラリにありがちな「○○をしたければカネを払え」というのが一切ないので、どんな立場の個人・法人でも比較的気軽に使うことができるが、スマートフォン版は制約が多く、ほぼ有料となっている。

最近のツールにありがちな「プログラミングしなくてもつくれる」という謳い文句だが、実際にはコーディングの量を減らせるだけであって、少なくとも基本的なスキルは必要。

ただし、UnityやCocos Creatorなどよりも昔からある有料の「Construct」ライクな、UIエディタだけでおおくのことが実現可能。

いわゆるイベントドリブンの設計で、Unityなどとは異なり「イベントの発生に対してあらかじめ定義されたアクションを実行する」形になっており、基本的な機能に関してはソースコードを書かなくともGUIエディタでひとつずつ指定できるという、あの「RPGツクール」に近い部分がある。

スプライトなどのオブジェクトに対してはビヘイビアを割り当てることで、イベントやアクションをいちいち指定しなくても簡単に特定の機能を実行することができる。他のユーザーがつくったビヘイビアを使用すればさらに手軽になり、ソースコードを書く手間を大幅に削れるだろう。

比較的新しい海外製ライブラリなのだが、珍しく公式サイトのドキュメントは一部のみだがすでに日本語化されている。

Web版が提供されていることもあって利用開始のハードルは低く、1クリックでさまざまな環境向けにビルドすることができる。

エディタは単なるドラッグ&ドロップでGUIを構築できるだけでなく、マップの構築と難易度調整をするためのレベルエディタとしても使うことが可能。

そのエディタで変更した内容を即、実行中のアプリに反映させるといういわゆる「ライブプレビュー」機能も搭載。

マップチップやパーティクル、テキスト入力のUIウィジェットなど、ゲーム開発でよく使う機能は一通りそろっている。

個人開発者のことをよく考えられており、モバイル向け広告で有名なAdMobのそれを簡単にゲーム内で表示させる機能もある。

表示するテキストに「BBCode」というかなり昔から存在する掲示板向けのテキストスタイルを指定する書式(マークアップ言語)に一部対応している。

開発母体はすでに法人化して資金調達に成功しており、この点からも将来性があるといえるだろう。

欠点

とにかく情報不足

まったく情報が足りない。公式サイトでさえ得られるデータは限られ、肝心のAPIリファレンスですら未完成の状態。なぜか動画のチュートリアルは充実しているが、それだけで実際の開発がどうにかなるわけもなく、説明文の検索すらしづらい。

期待のニューフェイスではあるものの、現在は“期待”のままで実用に関しては正直厳しいだろう。Godotのように、ポテンシャルは高いが人気が出ずに下火になってしまうような嫌な予感もする。

なお、公式サイトの対応言語に日本語の項目があるものの、実際にはほとんど翻訳されておらず自分で英語を読み進めていくしかないのが現状だ。

発展途上:やや機能不足

情報不足であることからもわかるとおり、機能面でも他の主要ライブラリと比べるとやや物足りなさもある。

特に有名な外部ツールのファイル形式にもあまり対応できていない部分があるのは残念。

GDevelop向けのプラグインやビヘイビアの数も少なく、その中で実際に有用なものはさらに少ない。

あらゆる面で「まだまだこれから」という印象。

静的型付け言語に非対応

現状、TypeScriptやC#といった、安定した効率的な開発には必須ともいえる静的型付け言語に対応しておらず、少なくともフルサポートはないようだ。

といってもJavaScriptのライブラリなので、ユーザー側でTypeScriptからコンバート(コンパイル)すればいい話なので、そこまで大きなデメリットではないだろう。

Godot Engine

公式サイト:Godot Engine
読み方:ゴドー(人名)、またはゴー・ドット(go dot) *推測
表示形式:2D/3D
ライセンス:無料の完全オープンソース(MITライセンス)
開発環境:あり
出力対応環境:Windows, macOS, Linux, UWP, *BSD, iOS, Android, Nintendo Switch, PlayStation 4, Xbox One, web(HTML5/WebAssembly)
開発対応環境:Windows, macOS(Apple Siliconも), Linux, *BSD and Android (experimental)などの32/64ビット環境
プログラミング言語:GDScript(Python的)、C#、C++、他
情報量:少
開発ペース:普通
GUIコンポーネント:あり
開発元:*個人の集団(NPOのSFCが支援)

Unity炎上の際に一部著名ゲームクリエイターが推したため、急速に知名度を上げているエンジン。軽量なエディタが特徴の2D/3Dゲーム開発環境で、2Dでも3Dでもサクサク動作する。

元々は南米で開発されて有償だったものが無料化・オープンソース化され、誰でも使えるようになった。みずから「完全に自由(無料)かつオープンソース」と謳っている。

ライブラリ、ゲームエンジン、エディタともに初心者向けが意識されていてわかりやすい。

使用する言語は独自のスクリプト言語「GDScript」だが、Pythonベースなので習得は容易(Pythonをそのまま使わなかったのは、処理速度の面で限界があったため)。

他にもさまざまな言語のブリッジが用意され、人気のあるC#だけでなくネイティブコードのC++にも「GDNative」という形で完全対応。この点も非常に大きい(C++版は一時開発が止まっていたが再開された)。さらに、完全対応ではないがRust、Nim、D言語といったややマイナーな言語にも開発コミュニティは対応している。

【画像】各対応言語の使用率(公式サイトより引用)

ネイティブコードで開発したい場合は、DXライブラリ(非オブジェクト指向・独自ライセンス・エディタなし)やCocos2d-x(Cocos Creatorへ移行・エディタなし)よりこちらを推薦したい。というより、2D・3D両対応かつ無料のオープンソースとなると、これ以外に選択肢がない状態だ(Unreal Engineは有料・2D非対応)。

機能を拡張するためのさまざまなライブラリやツールが公式サイトの「Godot Asset Library」で提供されている。

また、非常に多くの環境に出力することができ、デスクトップ/モバイルの主要OSやウェブだけでなく、サードパーティの企業と契約すれば各種コンソール機(家庭用ゲーム機)にも簡単に対応可能。

しかもエディタ自体、WindowsやMacはもちろんLinuxやAndroidでも動く、つまりはその環境で開発が可能という優れものだ。

意外にも、開発は特定の法人が行っているのではなく、あくまで個人が非営利目的で集まって行っているだけという純粋なオープンソース・プロジェクト。NPO(非営利法人)ですらない。Software Freedom Conservancy (SFC)というオープンソース活動を支援するNPOの一プロジェクトという位置付けになっている。そのため開発コミュニティは「プロジェクトが他社に売却されるといったことはない」と謳っている。

非常に機能が多彩でありながらエディタは軽量、しかも完全無料のオープンソースという、今後が非常に楽しみなライブラリだ。

* Godotという名前は、「Go, dot」(動け、ドットよ)からか?(もしくは人名の「ゴドー」)

欠点

運営母体がない

今では有名なライブラリは、それがオープンソースであっても大半が法人によってメインの開発が行われているものだが、このGDevelopに関してはよくも悪くもあくまで個人が集まって開発を進めているだけだ。NPOの「SFC」という団体が支援しているという名目ではあっても、数あるプロジェクトのうちのひとつにしかすぎない。

これは、運営母体が営利企業に買収されてライセンス(料金体系)を含めて方向性が突然変わってしまうリスクが低いというメリットもあるものの、一方で開発組織が弱く、何かあったときにどれだけ継続できるのかはまったくの未知数だ。

現状、主要スタッフは6人しかいないらしく、あとは彼らの胸先三寸で決まってしまうといっていい。こうした将来性に不透明な部分があることが、ライブラリのクオリティは高いにもかかわらずゲーム企業による採用実績が乏しい原因のひとつになっているかもしれない。

中途半端な独自言語

GDScriptはPythonベースだが同じではないので、Pythonの使いたい機能が使えないこともままある。

ただし上記のとおり、そもそもC#やC++にも完全対応し、Rustなどにも部分対応しているため選択肢は驚くほど多い。仮にGDScriptが気に入らなくても特に問題はないだろう。

機能不足

元は有料だったにもかかわらず、やや機能面で物足りなさを感じる部分も。

情報不足

リリースからそれなりに年数が経っているものの、情報不足の感が強く、日本語の情報にいたっては皆無に近い。

エディタ依存

この点については、UnityやCocos Creatorと同じ。

Phaser.js

表示形式:2D(ごく一部3D)
ライセンス:オープンソース
料金:基本無料(一部有料:開発環境・ライブラリなど)
開発環境:あり(有料
情報量:中
開発ペース:高
GUIコンポーネント:あり(外部ライブラリ)

オープンソースで開発されているHTML5対応の2Dゲームライブラリ。

現状、HTML5に特化した2Dゲームライブラリとしては扱いやすい良ライブラリなのだが、実は専用エディタが有償(30ドル)だったりするなど問題もあり、それならば初めから機能が豊富なCocos CreatorやUnityを使ったほうがいいだろう(くわしくは後述)。

現行バージョンであるPhaser 3では3Dの機能はほとんどないが、次期メジャーバージョンであるPhaser 4では積極的に対応予定(らしい)。

ライブラリ自体が軽量で高速に動作し、物理シミュレーションやタイルマップ、アニメーション、スプライトシート(テクスチャアトラス)など、ゲームに必要な機能には一通り対応している。

それ以外も有志がさまざまな「プラグイン」を提供しており、それらを読み込めば簡単に使える仕組みだ。

GUIコンポーネント(ウィジェット)もデフォルトでは存在しないが、プラグインで基本的なものは提供されている。

canvas、WebGL両対応。

あくまでJavaScriptベースなのでUnityやCocos Creatorと違っていちいちエディタを起動したりコンパイルしたりする必要がなく、さくさく開発できるのが特長だ。

公式のドキュメントが充実し、特にチュートリアルはサードパーティ製のものも含めて豊富だが、そのほとんどが英語。日本語の情報は少ない。

以前はバージョン2.x系が主流だったが、現在は3.x系に移り変わり、もうすぐ3D機能を強化した「4」が登場する予定。ときどき、2.x系と3.x系の情報が混在していることがあるので注意が必要だ。

欠点

クロスプラットフォーム化・GUIエディタの利用は有料

非常に残念なことに、基本的にはWebゲーム用ライブラリであるPhaser.jsだが、それをクロスプラットフォーム化するには有料のエディタが必要になる。

確かに基本機能だけで十分な性能を持つが、正直この点からして「基本有料」といっても差し支えない。あえてこのライブラリを使う理由に乏しく、どうせならUnityを使ったほうがいいと考える人は多いだろう。

互換性を考慮していない

ある程度は仕方がないのだが、メジャーバージョンアップ時に大幅に仕様が変更されることが多い。

v2.x系から3.x系の際がまさにそうで、既存のコードの大幅な書き換えが必要になり、このライブラリの新バージョンへ対応することは現実的ではなく、旧バージョンを使いつづけるしかないのだ。

それもあって旧バージョンもしばらくの間はサポート対象でアップデートが継続されるが、もちろん長くは期待できない。

2022年12月現在、ベータ版として提供されているv4.x系も同様で、今がまさに過渡期でどちらを使うか悩ましい状況だ。

というわけで今のところ、ゲームエンジンとしてPhaser.jsを選択すること自体、あまりおすすめできない。

Webにしか対応していない

上記のとおり専用エディタが有償で、ゲームアプリをクロスプラットフォームでパブリッシュするにはそれが必須のため、無料のままではどうしようもない。

ブラウザ以外の環境で動かしたいときに困ったことになりやすいが、今はWebアプリケーションをネイティブアプリとして動かすための環境がいろいろと整っているので、よほど高速実行したいのでないかぎり、なんとかなる場合も多い。

TypeScript非対応

Webゲーム用ライブラリなのに今どき珍しくTypeScriptには対応しておらず、内部はすべて素のJavaScriptで記述されている。もちろん自分でコンパイル(ビルド)すればいい話だが、少し残念な部分だ。

ただし、APIの型情報を記したテンプレートファイルは公式から提供されているので、IDEなどでのコード補完には使える状況。

設計思想がやや独特

基本的にはクラスベースのシンプルなオブジェクト指向のAPIだが、少し癖のある部分もあり、初めのうちは戸惑うことも。

日本語情報の少なさ

これは、Unityを除く他の海外製ライブラリ共通の課題。

Babylon.js

表示形式:3D
対応プラットフォーム:Web(WebGL)
 開発中:DirectX on Windows, Metal on iOS/MacOS, OpenGL on Android, and OpenXR devices such as HoloLens 2 and Oculus
ライセンス:無料の完全オープンソース
開発環境:あり
情報量:少
開発ペース:普通
GUIコンポーネント:あり
GUIエディタ:あり

WebGLに特化したライブラリとしては一番おすすめできる3Dゲームライブラリ。

完全無料のオープンソース。企業が開発したライブラリにありがちな「○○をしたければカネを払え」というのが一切ないので、どんな立場の個人・法人でも比較的気軽に使うことができる。

3Dゲームや3Dオブジェクトの表示に必要な機能は一通りそろっている。

グラフィックカード上でシェーダの処理をさせるcompute shader対応の「WebGPU」を使った機能も実装されている。要するに、すでに古いWebGL 2.0をいちいち通す必要がないということ。

以前はGUIエディタがなかったが、現在ではWeb版ではあるがすでに提供されている。他にも各種ツールが自前でそろえられており、オープンソースの3D開発環境としては最も充実しているもののひとつだ。

オブジェクトの表示は基本的に、ゲーム開発環境に限らず3DCGの分野ではポピュラーになった「ノードにコンポーネントを追加し、複数ノードをリンクさせていく」形式。GUIエディタもそれをしやすくするためのものになっている。

サンプルをカスタマイズして動かすためのWebアプリも提供されているため、手軽にいろいろなことを実際にチェックすることが可能。

元々はWeb向けに特化したライブラリ・開発環境だったが、現在「Babylon Native」と呼ばれるネイティブアプリ向けの機能が実装中だ。

欠点

日本語の情報が圧倒的に不足

ほとんどないといっていい。自分で英語の情報を読み解いていくしかないだろう。

Web以外に正式対応していない

ネイティブアプリをつくる際に問題になるが、そもそもWebGL向けに開発されたものなので他のライブラリとは目的が異なり、仕方のないことだろう。

前述のとおり、Babylon Nativeが開発中なので期待して待とう。

Cocos2d-x

表示形式:2D、一部3D(2.5Dも)
対応プラットフォーム:iOS(iPhone/iPad)、Android、Windows、macOS
ライセンス:オープンソース
開発環境:なし(あったが更新終了)
情報量:やや多
開発ペース:普通
開発元:Chuhkong Technologies(中国)

元々iOS向けに開発されていた「Cocos2d」というまったく別のライブラリを参考にしてつくられた、クロスプラットフォームの2Dゲームライブラリ。

ネイティブコード(C/C++)、JavaScript(Cocos2d-JS)、Lua対応で高速動作が可能。肝心のWebへの対応として以前はCocos-htmlが存在したが、Cocos Creatorの登場もあって開発終了となってしまった。つまり、Cocos2d-xでWebゲームをつくりたくても、今となってはもはやどうしようもない。

なんといってもネイティブコードに対応しているので、スクリプト言語では処理がきついゲームの開発に向いている。また、きちんとしたオブジェクト指向のライブラリである点も大きく、同じネイティブコード対応の「DXライブラリ」とは異なる点だ。

前述のCocos Creatorのベースエンジンにもなっているため、現在でも積極的に開発が進められている。

といってもそれとは似て非なるもので、ライブラリの基本的な仕組みやシステムがそれぞれ異なり、ソースコードの互換性はまったくなく、あくまで別物といえる。

標準でテクスチャアトラス(スプライトシート)やパーティクル、物理エンジン、そしてGUIコンポーネントに対応しており、すぐに開発を進めることができる。

古い、こなれたライブラリで日本語の情報もそれなりにあるのも強み。

以前は唯一といってもいい高速動作する2Dライブラリだったが、そもそも開発コミュニティでもCocos Creatorが優先され、C++に正式対応したGodot Engineや高速に動くLuaに対応したDefoldが出てきた今となっては、その存在意義は薄らいできた。

とはいえCocos Creatorのエンジンであるかぎり、今後の継続的な開発にも期待ができるだろう。もっとも、いつかCocos Creator側がそれに特化したネイティブコードのエンジンをつくることになったら一気に危うくなるが。

欠点

エディタがない

以前はCocos Studio(CocosStudio)というGUI・アニメーションエディタや、Cocos Code IDEというJavaScript・Lua対応の開発環境が存在したものの、現在ではCocos Creatorに開発の主軸が移ったこともあり、すでにそれらの更新は終了してしまっている(公開も終了)。

逆に、Cocos Creatorのシーンファイルを読み込むことも難しい。というのも以前はそのためのライブラリが存在していたのだが、それも2017年頃に開発がストップしてしまった。

Cocos2d-x側でCocos Creatorのシーンファイルを読み込むことはできるのだが、そちらを完全に操作できるわけではなく限界がある(くわしくはCocos Creatorの項目を参照)。

Cocos Creator自体がCocos2d-xの上で動いており、またすべてオープンソースなのだから自分でなんとかしようと思えばできるかもしれない。面倒で難しい面もあるだろうが。

ウェブ向け(HTML5版)がない

元々、JavaScript実装であるCocos2D-JSから派生した「Cocos-html」というWebゲーム向けのライブラリが存在したのだが、こちらは完全に開発が終了してしまっている。

ブラウザゲームなどを開発したい場合は、Cocos Creatorのほうを使うしかない(互換性はない)。

HSP

表示形式:2D、3D
ライセンス:BSDライセンス
対応開発環境:Windows
出力対応プラットフォーム:iOS(iPhone/iPad)、Android、Windows、macOS、Linux、Webブラウザ
開発環境:あり
情報量:やや多
開発ペース:遅い(1年2回程度の更新)
GUIコンポーネント:なし
開発元:ONION software(NPO:日本)

実は、筆者が個人的に最もプログラミング初心者におすすめしたいものがこれ。

確かにプログラミング言語としてのHSPはゲーム開発に活用できる場面が少なく、JavaScriptやPythonのようにプロの世界でも使われるようなものではないが、非常にシンプルでわかりやすく、ビギナーが迷わずにすむのは大きな利点だ。

プログラミング言語だけでなくAPIやライブラリも初心者向けを強く意識してつくられているので、とにかく全体がわかりやすい。

開発ツールもオールインワンで必要な機能がすべて初めからそろっており、ITリテラシーが高くない初学者でも簡単に導入できるのもいいところ。

あらゆる面で初心者のゲーム開発に特化した珍しい開発環境といえる。

すべてがオープンソースコミュニティによって開発され、もちろん無料で全機能が使えるのも大きい。

開発環境としてのHSPはWindows専用だが、HSP3Dishという名称でつくったゲームの出力先はiOSやAndroidなどクロスプラットフォームで対応している。

公式の機能だけでもゲームをつくる分には十分だが、ユーザーがつくったライブラリも充実しており、「○○をつくりたいけど~がない」といったことが少なくてすむ。それはつまり、公式APIの機能が物足りなくても自分でプラグインのようなものをつくりやすいということ。

すでに古いライブラリではあるものの、裏を返せばよくこなれていて情報が多いともいえる。そして、開発の参考にするためのサンプルが多いのも特長。

名実ともに“初心者向け”の開発環境だ。

欠点

言語が古い

プログラミング言語としてのHSPは昔の“非オブジェクト指向”時代のPerlやPHP、Basicのような非常にシンプルな仕様になっており、わかりやすい反面、現在主流の言語では当たり前の機能もないなど開発のしやすさには限界がある。

また、開発者のミスを防ぐための機能も不足し、いわゆる「goto文」のような問題の出やすい構文もあるため間違いが起きやすい。

が、こうした点は初心者にとってのわかりやすさ・習得のしやすさと表裏一体なので、どうとらえるかは人によりけり、場合によりけりだろう。

その他

Three.js

表示形式:3D
対応プラットフォーム:Web(WebGL)
ライセンス:無料の完全オープンソース
開発環境:あり
情報量:少
開発ペース:高
GUIコンポーネント:なし

かなり昔(2010年)からある、軽量なWeb用の3D表示ライブラリ。

あくまで3Dオブジェクトを表示するためのライブラリなので、ゲームをつくる際はammo.jsといった物理エンジンなどの他のライブラリと自分で組み合わせる必要がある。

圧倒的に情報量が多く、日本語のそれも以前からかなりあるので初心者にはちょうどいいかも。

欠点

ネイティブ環境に対応していない

他のWebゲーム向け専門のライブラリと同じくネイティブアプリに移植する際に問題になりやすいが、CordovaなどのWebアプリをネイティブ対応にするためのライブラリを別に用いればなんとかなる。

ただし、速度面などでデメリットもあり、ブラウザと同水準で動くものは稀。ここは覚悟しておいたほうがいいだろう。

開発環境がない

専用のIDEやエディタがない。

他のライブラリが必要(機能不足)

ゲーム開発に必要な基礎的機能すらなく、いろいろな外部ライブラリと組み合わせる必要があり、そのせいでどうしても相性の問題が出てしまいやすい。

重い

ライブラリ自体は軽量なのだが、実際の動作は新しいPlayCanvasやBabylonに比べると遅い。

CreateJS

公式サイト:CreateJS
表示形式:2D
対応プラットフォーム:Web(canvas/WebGL)
ライセンス:無料の完全オープンソース
開発環境:なし
情報量:多
開発ペース:低
GUIコンポーネント:なし

HTML5の初期からある総合ライブラリ。2D表示ライブラリの「EaselJS」、サウンドの「SoundJS」、アニメーションの「TweenJS」、プリロード用の「PreloadJS」の4つのライブラリで構成される。。

古いライブラリで、ゲームだけでなくさまざまな場面で利用されることが多く、日本語の情報も豊富。

この手のものには珍しく、Webアプリケーションをネイティブアプリとして動かすための環境のひとつである「Cordova」に正式対応しているのも強み。

かつて人気のあったAdobe Flash(ActionScript 3.0)の影響を強く受けており、シンプルでわかりやすいAPIになっている。


const container = new createjs.Container();
stage.addChild(container);

ただ、ゲーム開発に特化したライブラリではないので、物理エンジンなど他のライブラリと組み合わせる必要がある。

公式サイトを見ると2018年を最後に更新が止まっているかのようだが、実際には少しずつではあるものの現在でも更新が続けられている。といってもそれなりに有名なライブラリではあるものの、今となってはあえて採用する理由は乏しい。

Webゲーム以外で利用する場合は、最近人気の「PixiJS」をおすすめする。

欠点

開発環境がない

専用のIDEやエディタがない。

他のライブラリが必要(機能不足)

ゲーム開発に必要な基礎的機能すらなく、いろいろな外部ライブラリなどと組み合わせる必要があるのだが、そのせいでどうしても相性の問題が出てしまいやすい。

Akashic Engine

公式サイト:Akashic Engine
表示形式:2D
対応プラットフォーム:Web(canvas/WebGL)
ライセンス:無料の完全オープンソース(MITライセンス)
プログラミング言語:TypeScript、JavaScript
開発環境:なし(コマンドライン・ツールは存在)
にほんごた
情報量:少
開発ペース:中
GUIコンポーネント:*あり(ライブラリ)
開発元:ドワンゴ(日本)

日本の企業ドワンゴが提供する2Dライブラリで、基本的にはオーソドックスな設計。

動画配信サイト「ニコニコ動画」のゲームコンテストなどで利用されることも。

公式の情報が日本語であることが特徴。

業界としてはマイナーな部類に入るライブラリだが、意外にも継続的に開発が進められている。

基本機能はごくシンプルなものだが、GUIコンポーネントや物理シミュレーションなどは外部ライブラリで対応している。

欠点

海外でまったく人気がない

日本語の情報しかなく英語の説明すら存在しないせいで、今後海外で普及する確率はごく低い。

オープンソースではあるものの貢献者(ボランティアの開発者)が集まる可能性も低く、有名企業が開発しているわりには先行きに不安がある。

DXライブラリ

表示形式:2D、一部3D
対応プラットフォーム:Windows、Android
ライセンス:独自(オープンソース的)
プログラミング言語:C/C++
開発環境:なし
情報量:中
開発ペース:中
GUIコンポーネント:なし

こちらも古くからあるゲームライブラリ。ネイティブコードでの開発に特化してつくられており、APIが単純な関数のみなのでC言語だけですべて記述することも可能。つまりオブジェクト指向ではなく、今どき珍しい昔気質の設計となっている。

個人開発であるにもかかわらず、比較的コンスタントに開発が継続されているのは好印象だが、場合によっては半年以上、更新がないこともある。

非常に軽量で高速に動作するものの本当に基礎的な機能しかなく、また他のライブラリとの併用をまったく想定していないため大半の要素を自分で実装しなければならない。

総合的に見て、今となってはなかなかおすすめしづらいライブラリだ。弾幕シューティングなどの2Dゲームをどうしても高速動作させたい場合やC言語の勉強がしたい場合は役に立つだろうが、ネイティブコードに対応した2DライブラリにはGodot EngineやCocos2d-xがすでに存在しているためあえてこれを使う理由に乏しいのが現状だ。

いずれにせよ個人が無償で提供してくれているライブラリなので、「すべて自己責任で」というのが大前提になる。それでは困る場合は、素直に企業がサポートする他の開発環境を選択したほうがいいだろう。

欠点

個人が開発

個人がひとりで開発しているものなので、どこまで開発が継続されるかも未知数。もっともこの点は、長年に渡って開発が継続されており、さほど心配する必要はないだろう。

無料とは言いがたいライブラリ

PlayCanvas

表示形式:3D
対応プラットフォーム:Web(WebGL)
ライセンス:オープンソース
開発環境:あり
情報量:少
開発ペース:普通
GUIコンポーネント:あり

高速・軽量を謳う3Dライブラリ。

かならずしもゲーム開発を目的としたものではなく、Web広告などで3Dオブジェクトを表示するためにも使われている。

実際にかなり高速で、細かいカスタマイズも可能なのだが、残念なことに実質的に基本有料。無料の「Freeプラン」ではプロジェクトが「パブリック」ならプロジェクト数無制限だとされているが、そもそもこのパブリックが何を意味しているのか公式サイトに説明がない。おそらく、外部に内容が公開されるオープンソース的なプロジェクトのことを意味しているらしい。

ライブラリ(エンジン)のソースコード自体はオープンソースライセンスで公開されているので、自分で開発環境を整えれば運営側の意向に左右されることなく開発することも可能だろうが、実際にはさまざまな面で困難だろう。

開発は基本的にクラウド(Web上)で行い、開発されたアプリやゲームをそのままそこで公開されることになる。

全体的に斬新だが、実際の使い勝手はどうかというところがある。

欠点

基本有料

欠点というのはなんだが、Unreal Engineなどと同様で基本的には有料と考えたほうがいい。

無料のままでは、ソースコードなど中身を公開しない「プライベート」プロジェクトをつくることができないためだ。

日本語の情報が圧倒的に不足

日本向けには日本の法人(GMO)が窓口になっているが、開発のための情報は乏しい。実際の開発では、自分で英語の情報を読み解いていくしかないようだ。

開発が終了したライブラリ

enchant.js

ライセンス:オープンソース

HTML5普及の初期に人気が出た印象が強いためか、未だに知名度が高い2Dゲームライブラリ。

canvas要素だけでなくDOMでの表示にも対応している。

しかし、とっくの昔に更新は停止し、開発元の会社も解散したことで公式サイトも消滅して、今はもう事実上使えないと考えたほうがいい。

中身がシンプルなので自分で実装する際の参考にはなるだろう。

まとめ

正直、どれも一長一短あって「これだ」という決め手に欠ける印象だ。全体的にいって、特に3Dがやや弱い傾向がある。

2D開発では、Defoldが各プラットフォーム向けのネイティブの拡張が可能で、しかも欧米で開発・管理されているので著作権など知的財産権の面でも安心なので魅力的だが、UIをつくるためのGUIコンポーネントが不足しており不満が残る。

Cocos Creatorは全体的に機能が豊富でクオリティが高いものの、3Dが弱く、中国製であることが懸念材料。

Godot Engineは軽量でよくできた開発環境で、しかも完全オープンソースだが、情報不足で3Dの機能が物足りない。

Phaser.jsやBabylonは理解しやすく開発しやすいが、基本的にWebのみの対応なのが残念。

HSPは初心者向けとしては最適で日本語の情報も豊富だが、いかんせん古く、将来性に不安がある。

総合的に見てUnityは最も価値が高いが、ライセンス問題が未だくすぶっており、実質有料かつ非オープンソースでネイティブコードにも対応していないのでチューニングに限界があり、処理が重いのが✕。

Unreal EngineやPlayCanvasも同様に無料で使える部分もあるが基本的に有料と考えたほうがよく、常にお金の問題がつきまとう。

それ以外は総じて普及率が低く、そもそも先行きに不安がある(事実上、業務用としては使いづらい)。

個人も法人も自身やプロジェクトの状況に応じてその都度、判断するしかないだろう。

分野ごとのおすすめ

端的にまとめると以下のようになる。

総合(2D/3D共通)

Unity

2Dクロスプラットフォーム

Cocos Creator
Godot Engine
Defold

Web専用

3D: Babylon.js
2D: Phaser.js

ハイエンド向け

3D: Unreal Engine
2D: Cocos2d-x、Godot Engine

完全オープンソース(エディタ含む)

【3D】
Godot Engine
Babylon.js

【2D】
Defold

初心者向け

HSP
Defold

Webゲームは開発しやすいが……

Phaser.jsやBabylonといったWebゲームに特化したライブラリは極端な話、CDNからスクリプトを読み込むだけで使えるようになるのでローカルサーバーさえ用意できればすぐに開発をスタートでき、これほど手軽なものはないだろう。

それどころか、PlayCanvasのように最近増えてきたクラウド上ですべて開発するクラウドIDEを利用すれば、ローカルに開発環境を構築する必要さえない。

しかもElectronやCordova、React NativeといったWebアプリをベースにしてネイティブアプリをつくるためのライブラリを利用すれば、さまざまな環境に対応することもできる。

SNSでもWebゲームに力を入れているサービスもあるので今後に期待できるが、それでもネイティブアプリの需要は強く、やはりWebを含めてクロスプラットフォームにきちんと対応したUnity、Cocos Creator、Defoldは強いといえるだろう。