[つばさ 第二部] 第二章 第四節
雨とは厄介なものだ。
道がぬかるみ、川が増水することで移動が困難になり、やたらと時間がかかってしまう。そうしている間に大事な商機を逃し、あとで大きな後悔を抱え込むことになる。
とはいえ、命あっての物種だ。無理をしても成 ...
道がぬかるみ、川が増水することで移動が困難になり、やたらと時間がかかってしまう。そうしている間に大事な商機を逃し、あとで大きな後悔を抱え込むことになる。
とはいえ、命あっての物種だ。無理をしても成 ...
[つばさ 第二部] 第二章 第三節
雲行きが怪しくなっていた。
空の低いところに厚く雲がたれ込め、太陽の光を深く遮った。
風は湿り気を帯び、鳥たちの姿は上空から消えた。
「これは一雨来るな」
翼人のこういった時の感覚が外れることはない。 ...
空の低いところに厚く雲がたれ込め、太陽の光を深く遮った。
風は湿り気を帯び、鳥たちの姿は上空から消えた。
「これは一雨来るな」
翼人のこういった時の感覚が外れることはない。 ...
[つばさ 第二部] 第二章 第二節
お知らせ
嘆くと同時に机に突っ伏す。そこには、ノイシュタットの各地から送られてきた書状が、文字どおり山積みになっていた。
「例の件が起きてから ...
アットノベルスが復活したらしい……
本文「なんでこんなことになった」嘆くと同時に机に突っ伏す。そこには、ノイシュタットの各地から送られてきた書状が、文字どおり山積みになっていた。
「例の件が起きてから ...
[つばさ 第二部] 第二章 不穏
――あなたはなぜここにいるの?
あのときの声が、今、鮮烈に思い起こされる。
――あなたはなぜ疑問に思わないの?
問いつめるでもなく、ましてや愛撫するでもない言葉の塊。
――あなたはなぜ……生きている ...
あのときの声が、今、鮮烈に思い起こされる。
――あなたはなぜ疑問に思わないの?
問いつめるでもなく、ましてや愛撫するでもない言葉の塊。
――あなたはなぜ……生きている ...
[つばさ 第二部] 第一章 第五節
お知らせ
次々と矢を射かけられ、こぶし大の石まで一緒に ...
現在、またしてもアットノベルスがアクセス不能になっている。
かわりに、ここか「小説家になろう」で読んでほしい。
本文 その翼人の男は対応に苦慮していた。次々と矢を射かけられ、こぶし大の石まで一緒に ...
[つばさ 第二部] 第一章 第四節
夜の森はあまりに静かで、生きとし生けるものすべてを眠りの世界へと誘おうとする。
今日に限って虫たちの声も聞こえない。すべてが深い闇の中に沈んでいるようで、辺りは沈黙の幕に覆われていた。
そうした中で、そっとうごめく者た ...
今日に限って虫たちの声も聞こえない。すべてが深い闇の中に沈んでいるようで、辺りは沈黙の幕に覆われていた。
そうした中で、そっとうごめく者た ...
[つばさ 第二部] 第一章 第三節
「あー、もう嫌だ」
若い男の怠惰な声に、かえって場の空気が険悪なものになる。
ここローエ侯領の都グリューネキルヒェンにある領主の居城、その中央にある一室では、明白すぎる対立関係が展開されていた。
片や、やる気の ...
若い男の怠惰な声に、かえって場の空気が険悪なものになる。
ここローエ侯領の都グリューネキルヒェンにある領主の居城、その中央にある一室では、明白すぎる対立関係が展開されていた。
片や、やる気の ...
[つばさ 第二部] 第一章 第二節
「なんでこんなことになった」
嘆くと同時に机に突っ伏す。そこには、ノイシュタットの各地から送られてきた書状が、文字どおり山積みになっていた。
「例の件が起きてからまだ間がないですし、そもそも以前から未解決の問題が多かったで ...
嘆くと同時に机に突っ伏す。そこには、ノイシュタットの各地から送られてきた書状が、文字どおり山積みになっていた。
「例の件が起きてからまだ間がないですし、そもそも以前から未解決の問題が多かったで ...
[つばさ 第二部] 第一章 そして、これから
「ああっ、私はなんであんなことを!」
けっして広くはない部屋に、妹姫の慚愧(ざんき)の声がこだまする。
「ああ……私はとんでもないことを……」
「殿下」
「どうしてあんな馬鹿なことを、どうしてよりによってお ...
けっして広くはない部屋に、妹姫の慚愧(ざんき)の声がこだまする。
「ああ……私はとんでもないことを……」
「殿下」
「どうしてあんな馬鹿なことを、どうしてよりによってお ...
[つばさ 第二部] 序章 第三節を投稿
トン、トン、トン、と、音がする。
小刻みに小気味よくつづくそれは、判然としない意識の中にゆるやかに、そして静かに入り込んでくる。
甘いような匂いが鼻に届き、鼻腔の奥をわずかにくすぐる。重い瞼(まぶた)が刺激を受けて持ち ...
小刻みに小気味よくつづくそれは、判然としない意識の中にゆるやかに、そして静かに入り込んでくる。
甘いような匂いが鼻に届き、鼻腔の奥をわずかにくすぐる。重い瞼(まぶた)が刺激を受けて持ち ...