[つばさ] 最新話を投稿:第六章 雌伏のとき――無料で読めるファンタジーのオリジナル長編小説

最新話を『小説家になろう』に投稿。
アットノベルスにも)

(冒頭部分)

 やはり、地に足をつけていると落ち着く。どだい、人間が空を飛ぼうとすることは愚かな行為だった。
「翼人でもあるまいし……」
 顔をしかめながら、ブーツの底を床にこすりつける。ここが空中ではないことを確認するかのように。
 カセル侯領で翼人の襲撃を受けてからのことは、まったくもって惨憺たるものであった。
 謎の集団に助けられ命拾いしたまではよかったものの、半壊した飛行艇ではとりあえず自領に帰るのがやっとで、泣く泣くイレーネという名の湖に不時着せざるをえなかった。
 しかも、そのあとがまたいけない。船底に大穴が空いているのだから浮かぶはずもなく、すさまじい勢いで沈みはじめた。
 何人かはその流れに巻き込まれてしまったが、湖がたいして深くなかったことが幸いして、なんとか着水時における死者を出さずにすんだ。
 だが、全員が命拾いをしたその後の事後処理もまた大変なものであった。

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