[牙] Chapter 5 episode: Safe House 1――オリジナル小説(ライトノベル)の連載:最新話
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(冒頭部分)
竹林に囲まれた周囲は、まだ日中とは思えない静寂に包まれている。
そこに、硬い靴音が響いた。
――ここは相変わらずか。
昔来た頃と何も変わっていない。たいして印象が残っているわけでもなかったが、意外とこの風景は憶えていた。
「懐かしいと感じる日が来るとはな」
「何浸ってんだよ、そんな格好で」
隣を歩く圭が半眼で相手を見た。
蓮は、各種拘束具でガチガチに固められていた。
雛子という名の悪徳女王からの逃走を図ったものの、結局、校内で圭にあっさり捕まってこうして引き回されているのだった。
「変態極まりないな」
「お前のせいだろう!? これでまた俺は――くっ」
悪評がさらに広まることを思い、こころを痛めた蓮は顔をしかめてうつむいた。
ついさっきも、コンビニで白い目を向けられたばかりだ。このままでは、外を出歩けない日が来るかもしれない。
こんな格好でいれば、白眼視されて当然なのだが、そんなことに気づけないほど蓮は追いつめられていた。
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