[つばさ] 最新話を投稿:第一章――ファンタジーのオリジナル長編小説
最新話を『小説家になろう』に投稿。
(冒頭部分)
だが、最悪の空中遊泳はすぐに終わることになった。
「何をしている!」
強い力に引き寄せられ、たくましい体に包まれる。気がついたときにはもう、市壁の安全なところに降ろされていた。
しなやかな筋肉に覆われた腕と濃紺の服が顔の近くから離れていく。
「大丈夫か?」
聞いたことのある声。
見たことのある肌。
そして、見まごうはずもない純白の翼。
「は、放して!」
ベアトリーチェは、男の手を無理やり振り払って後ずさりした。
離れてみて、男が困ったような驚いたような顔をしているのがわかる。
しかし、どうしてもベアトリーチェには許せなかった。
――なぜ、こんなひどいことをしたのか。
――なぜ、無実の私たちが虐げられなければならないのか。
「あなたたちが来なければ、あなたたちが|いなければ|(、、)、こんなことにはならなかったのに!」
ベアトリーチェからしてみれば、それはただ口を突いて出ただけの言葉だった。
しかし、その効果は予想以上のものがあった。男の顔から困惑の色が消え、すうっと冷めた表情へと変化していく。
「……だろうな。人間にとって翼人なんかどうでもいい存在だ。もっとも、翼人にとっても人間なんて興味ない――はずだったんだけどな」
そう言いながら、町の空のほうを見上げた。
未だ多くの翼人たちがたむろし、地上に這いつくばる人間たちを嬉々として追い回している。それを見る男の目は、どこか軽蔑の色が浮かんでいた。
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