[つばさ] 最新話を投稿:第四章 さよならの言葉 第十節――無料で読めるファンタジーのオリジナル長編小説
最新話を『小説家になろう』に投稿。
これで前半終了(のはず)。
(冒頭部分)
「アーデ様、そろそろお休みください」
背後からかけられた声に、窓の外をなんの気なしに眺めていた妹姫はゆっくりと振り返った。
「何よ、ユーグ」
「明日もまたいろいろな仕事があるのです。今のうちに体を休ませておきませんと、あとでつらくなりますよ」
アーデは、ノイシュタット侯の実妹としての責務だけでも数多くのものがあった。
姫とはいえ、ずっと遊んでいられるわけではない。それどころか平民の娘たちよりも、自由になる時間は圧倒的に少なかった。
そのうえ、彼女は|まったく別の仕事|(、、)もこなさなければならない。本人が選んだ道とはいえ、その負担は尋常ならざるものがあった。
しかし、アーデはけっして弱音を吐かない、文句を言わない。その芯の強さは、男であるユーグでさえ感服するほどであった。
ゆえにこそ、無理をしすぎないよう周りが気を配ってやる必要がある。
「さっさと寝てください」
「こんな時間に男が自分の部屋にいたら、どんな淑女|(レディ)だって眠れないと思うけど。それとも、私を抱いてくれるのかしら?」
「何をおっしゃっているんです。だいたい、私がここにいるのは誰のせいだと思ってるんですか」
呆れたようにユーグが首を横に振った。
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