[つばさ] 最新話を投稿:第十章 すべての終止符と喜びと 第六節 五――無料で読めるファンタジーのオリジナル長編小説
(冒頭部分)
「あのな」
ベアトリーチェの頭越しに声が聞こえてくる。
マクシムはヴァイクのあまりに一方的な物言いに、なかば呆れたように反論した。
「このばかやろうが。俺だって人間も重い業の鎖に縛られていることくらい――」
だが、その言葉を最後まで言い切ることはなかった。
「え?」
声を上げたのはベアトリーチェだった。その左の肩口から、剣の切っ先が顔を覗かせている。
一番はじめに、その意味するところを悟ったのはヴァイクだった。
「マクシムッ! 貴様……!」
ベアトリーチェが、ゆっくりと俯せに倒れていく。それを急いで受け止めながら、ヴァイクは怒りと憎しみに燃える目を、仇のほうへきっと向けた。
そのときになってようやく現状を正確に把握した。
マクシムの左胸を、鈍色(にびいろ)をした小ぶりの剣が刺し貫いている。その巨体が目の前で、なす術なく頽(くずお)れていく。
その背後に立っていたのは、黒に近い紫色の翼をした男――クラウスであった。
「な、なぜ……」
(つづきを読む)