[つばさ] 最新話を投稿:第九章 始まりの終わり 第二節――無料で読めるファンタジーのオリジナル長編小説
(冒頭部分)
天気と自分のこころがここまで対照的なのも珍しい。
ベアトリーチェはまるで夢遊病者のごとく、帝都の街中をさまよい歩いていた。
昨日、神殿を出てから自分がどうしたのかよく憶えていない。
昼間は公園で過ごし、夜は酒場の二階にいた気もするが判然としなかった。
体の疲れは不思議とあまりないから、無意識のうちにきっとどこかで休んでいたのだろう。
――でも、こころが重い。ひどく重い。
まるで死神に抱かれたかのようにひたすらにつらく、苦しい。悲鳴を上げたいのだがその気力さえない。
それほどまでに、大神殿に、尊敬する大神官に裏切られたことの衝撃は大きかった。
向こうには、裏切ったつもりなどないのかもしれない。
悪意はないのかもしれない。
しかしあれでは、実質的に信者を見捨てたも同然であった。
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