[牙] Chapter 5 episode: Come Back? 1――オリジナル小説(ライトノベル)の連載:最新話
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(冒頭部分)
朝の教室は半分気怠げな不思議な活気に満ち、特有の喧噪が教室の白い壁から跳ね返ってくる。
これから楽しい一日が始まるというのに、蓮のいる一画だけは暗雲が立ちこめていた。
「〈疲(ちか)〉れた……」
「おい、蓮が『ちかれた』って言ったぞ」
隣に来ていた圭が、蓮の頭をぐしゃぐしゃとやりながら呆れた声を上げた。
しかしその圭もまた、疲れがないわけではまったくなかった。美柚の姿が消えて以来、これまで徹夜で彼女の行方を探っていた。
にもかかわらず、手がかりはゼロ。がんばってもがんばっても何も成果がないというのが一番、応える。
「レンボーイ、おつかれボーイ」
「なんとでも言え……」
今ばかりは、光の言葉にも何も感じない。それほどまでに、蓮は心身ともに疲労困憊の極致にあった。
――全部、俺のせいだ。
後悔の念が、まず胸をよぎる。
眼鏡の影響があるとはいえ、もう少しだけ自分が注意していたら、少なくともみすみす目の前でさらわれるようなことにはならなかった。
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