[牙] Chapter 2 episode: Dark Night Walkers――オリジナル小説(ライトノベル)の連載:最新話
最新話を『小説を読もう!』に投稿
(冒頭部分)
薄い闇に包まれた室内に、人の気配は少ない。奥のほうでカチャリ、カチャリと金属質の音がわずかに響くだけで、影は見えなかった。
しばらくして、ひとつため息。料理か何かを失敗したようだった。
居間に出てきた女は、遠方から届いた足音に扉のほうへ目を向けた。
すぐに、それは開かれた。
「〈省(しょう)〉、か」
入ってきたのは、弟の省だった。歩幅からして初めから予想できたが。
「〈麗奈(れな)〉は?」
「例の学校へ向かった。忍び込んで調べるつもりらしい」
「あの目立つあいつが隠密行動ができるとは思えん」
「だが、あそこに正面から入れるのは麗奈だけだ」
「それはそうだが」
省は勝手に棚からワインボトルを出し、グラスに注いだ。
「ロミオは?」
「あいつも同じだ」
「みんな、あの学校がお気に入りか」
「本来、あそこが狙いではないんだが」
「だが、鍵を握っている」
「――ああ、そうかもしれない」
女が黒いエプロンを外しながら、大振りのソファに腰かけた。
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