基本無料のおすすめクラウドサービス一覧:PaaS/IaaSの永久無料要素 三大サービスを比較 Amazon・Google Cloud・Microsoft Azure
クラウドサービスとは、PaaSやIaaSと呼ばれることもある、ユーザーがみずからサーバーを構築できるサービスのこと。
本稿では、その中でも永年の無料枠(無期限無料枠)のあるものについてのみ紹介。
クラウドといっても種類が豊富なので、今回はGoogle、Microsoft、Amazonという3つの会社のサービスにしぼってまとめている。
数値は基本的に1か月あたりのもので、そうでない場合は「全体で」と表記してある。
なお、期間限定の無料要素は省いてある。
また、無料で使える部分が多いサービスはそのすべてを紹介しきれないので、一部割愛してある。
注意点
全体的に「どこまでが無料」で「どこからが有料か」、そして「いつまで/いつからなのか」といったくわしい情報、特に料金の仕訳が、携帯電話の料金設定並みにわかりづらい。
多くの機能を有しているせいというのもあるのだろうが、ほとんどのサービスが従量課金制だけに不安が残る。
各サービスにはたいてい料金シミュレーションのための機能があるので、素直にそれを使ったほうがいいだろう。
各自、自分自身で十分に調べてほしい。
用語
本稿では、単純化するために以下の用語を用いている。
自動請求
一定期間内の無料枠分を超過した場合に、料金が自動的に請求されるかどうか。
こうしたクラウドサービスは基本的に従量課金制なので、注意が必要。
自動請求でない場合は、有料サービスに移行しないかぎり課金されることはないが、そのかわり機能の一部が止まることもある。
仮想環境
仮想サーバーとも呼ばれる、クラウド上で構築されるバーチャルなシステム環境。
通常のサーバーを立てるのと同じようにOSやアプリを選択できるのでわかりやすい。
最近では環境をひとつにまとめたDockerなどの「コンテナ」をそのまま利用できるので、より使いやすくなっている。
メッセージキューイング
非同期メッセージを送り、それを順番待ち(キューイング)させて処理を行っていくシステム。
最近のサーバーレス環境では、重要な技術になりつつある。
ステート/タスク管理
サーバー(クラウド)全体の状態管理やタスク管理のためのシステム。
Microsoft Azure
有効期限:なし*
自動請求:なし*
最低必要料金:0円
通信量:クラウド側にとっての受信・すべて無料、クラウド側からの送信・5GB
静的IPアドレス:5つまで無料(パブリック IP アドレス)
サーバーレス環境:10アプリ、CPU1コア(共有*)、メモリ1GB、ストレージ1GB(App Service)
関数型イベントドリブン(複数間クラウド管理):100万回
ビッグデータ管理:低頻度の利用(Data Factory)
クラウド管理:実行時間500分(Automation)
データ分析:5000オブジェクト
検索:1万ドキュメント
(以下略)
【有料部分】
仮想環境(Linux Virtual Machines、Windows Virtual Machines)
Kubernetes:デプロイのみ無料*(Azure Kubernetes Service:AKS)
【解説】
残念ながらAzureを利用したコンピューティングの要となる仮想環境構築のLinux Virtual Machinesなどは、無期限の無料枠がなく1年間の無料トライアルがあるだけ。
しかし一方で、App Serviceというサーバーレス環境で10のWebアプリ(Webサービス)を運用できるので、十分無料のままいける。
ただ、そのApp Serviceも無料枠のFreeプランでは、CPUが他のユーザーとの共有になるため、すべてのリソースを自分のWebアプリのために使えるわけではないので注意が必要。
WindowsやSQL Server、ASPといったマイクロソフトの製品を使うためのクラウドサービスかと思いきや、意外や意外、LinuxやNode.jsといったオープンソースの環境も用意されており、柔軟性は高い。
プラットフォームロックの問題が懸念されたが、そこはさほど心配する必要はないようだ。
ただ、GCPやAWSに比べると、やや無料部分の内容に物足りなさを感じる。
また全体的に、料金の設定だけでなくサービスの詳細についての情報がわかりづらいのが残念。
公式サイトをよく見てもわからないって……
【注意点】
無料枠を超過したあと自動的に課金されることはないが、マイクロソフトから通知が来てからアカウントを有料版にアップグレードしないと、すべての機能が停止する(あとでアップグレードすれば再開可能)。
通信量は各サービスごとではなく、Azure全体で計算される(公式)。
Data Factoryは、タイプがAzure Data Factory V1で、かつ利用が低頻度の場合のみ無料。
Azure Kubernetes Service (AKS)はコンテナの配置のみ無料で、実際の利用では使ったリソース分だけ払う従量課金制になる。
ちなみに、Microsoft Azureの読み方は日本では一応「アジュール」らしい(原音に近いのはアジャ)。
Google Cloud Platform (GCP)
有効期限:なし
自動請求:なし
最低必要料金:3.28ドル(約360円)*
転送量:各サービスごと
静的IPアドレス:有料
サーバーレス環境:200万リクエスト、1秒あたりのメモリ使用量累計360TB、仮想CPU使用時間18万秒、転送量下り1GB(Cloud Run)
Webアプリ用サーバーレス環境:1日あたり28インスタンス時間、クラウドストレージ容量5GB、共有Memcache、検索処理1日あたり1,000 回、検索インデックス作成10MB、1日あたり100件のメール
データベース(NoSQL):容量1GB、読み込み5万回、書き込み2万回、削除2万回、転送量下り10GB(Filestore)
仮想マシン実行環境:仮想マシンインスタンス1つ、HDD 30GB、スナップショット用ストレージ5GB、転送量下り1GB(Compute Engine)
ストレージ:容量5GB、転送量下り1GB(Cloud Storage)
関数型イベントドリブン(複数間クラウド管理):呼び出し200万回(Cloud Functions)
(以下略)
【有料部分】
静的IPアドレス
【解説】
現状、無料に近い形で本格的な運用を続けられる唯一のクラウドサービスといえる。
最大手の検索サイト、動画配信サイトを運営してきただけあって、データーのI/O関係に非常に強い印象。
また、全体的に比較的わかりやすく感じる。
仮想マシン実行環境は、HDD30GBなどかなり豊富なリソースが無料で用意されている。
無料枠を超過しそうになっても自動的に課金されることはないので、とりあえず使ってみるには一番いいかも。
【静的IPアドレス】
クラウドサービスを利用する場合、独自ドメインを使うのが普通なのでクラウド側で静的IPアドレスを割り当て、それをドメインのDNSサーバーに登録する必要がある。
このGCPの場合、それが基本的に有料になる(以前は無料だった)。
東京リージョンの場合、1時間あたり0.004ドルかかる。
1か月(30日)間フルに使いつづけると、30日×24時間×0.004ドルなので3.28ドル(約360円)かかる計算になる。
微々たる額だが、完全無料というわけではなくなったので、少し注意が必要。
ただ、この辺は説明が非常にわかりづらいので、自分で確認してほしい。
(該当IPアドレスが使用中ならば課金されないとあるのに、表では課金されることになっている)
アマゾン ウェブ サービス(AWS)
有効期限:なし
自動請求:あり
最低必要料金:23.5ドル(約2600円)*
静的IPアドレス:無料*(Elastic IP アドレス)
転送量:クラウド側にとっての受信・すべて無料、クラウド側からの送信・1GB(Amazon EC2)
高速ストレージ:全体で25GB(Amazon DynamoDB)
関数型イベントドリブン(複数間クラウド管理):月当たり100万回/320万秒(AWS Lambda)
メッセージング:送信100万回、HTTP(S)10万回、メール1000回(Amazon SNS)
モニタリング:10パターン、API利用100万回、ログ取り込み5GB・保存5GB(Amazon CloudWatch)
オンライン会議システム:ベーシック版(Amazon Chime)
アカウント管理:モバイル向けMAU5万(Amazon Cognito)
メッセージキューイング:100万回のリクエスト(Amazon SQS)
ステート/タスク管理:ワークフロー実行1,000回、タスクなど合計10,000回、ワークフロー1日30,000
(以下略)
【有料部分】
仮想環境(Amazon EC2)
【解説】
残念ながら、AWSを利用したコンピューティングの要となるAmazon EC2は、無期限の無料枠がなく1年間の無料トライアルがあるだけなので、完全に無料のままWebサービスなどを提供することは実質的にできない。
Amazon EC2だと東京リージョンの場合、最小構成でも1か月あたり23.5ドル(約2600円)はかかるので、AWSを使うということは最低でもこれだけの額が必要になるということ。
* 米国バージニア州の場合は19ドル(約2100円)
そのため、通信費が1GBまで無料でもどちらにしろコストがかかる。
全体的に、とにかく料金設定が複雑でわかりづらいので、こちらの計算ツールを使うようにしよう。
【静的IPアドレス】(Elastic IP アドレス)
基本的に1リージョンにつき5アドレスまでは無料で使えるが、次の条件を満たしている必要がある。
・Elastic IP アドレスが EC2 インスタンスに関連付けられている。
・Elastic IP アドレスに関連付けられているインスタンスが実行中である。
・インスタンスに 1 つの Elastic IP アドレスしか添付されていない。
これ以外では、自動的に料金を請求されてしまうので注意しよう。
【注意点】
ストレージに関しては、Amazon S3 Glacierに「10万回のデータ取り出し」が無料とあるが、Amazon S3の料金体系が複雑で、筆者にはどこまでが無料のまま利用できるのかよくわからなかったため、表記しなかった。
機密データ管理(Amazon Macie)も同様で、1GBまでの「処理」は無料のようだが、その結果を保存しつづけた場合にどうなるか判然としない。
所感
今現在、クラウドコンピューティングを利用するメリットは計り知れないほど大きい。
いろいろなサービスが存在するなか、やはりGoogleとAmazonのサービスが飛び抜けている印象。
ただし、いろいろな理由でGoogle Cloud Platformとアマゾンウェブサービスは実際の運用となると実質有料になる。
少額ではあるものの、完全無料のままとはいかないのだ。
それに対し、Microsoft Azureは意外にも無料のままの実運用が可能で、かなりの人気サイトにならないかぎりそのままでも十分いけるだろう。
それはともかく全体の印象としては、ややGoogleのほうがストレージ、データベース周りで上回り、サービスの種類ではAmazonに分があるか。
Microsoftは、オフィスで普及しているWindows環境がそのまま使えるのが強みかもしれない。
いずれにせよ無料枠なので、それぞれのサービスをそれぞれ別のサイトで使ってしまえばいい気もする。