[つばさ] 最新話を投稿:第九章 始まりの終わり 第五節――無料で読めるファンタジーのオリジナル長編小説
(冒頭部分)
さすがに、こころの底から揺さぶられるような動揺を禁じ得ない。
周囲は、まるで地獄絵図のごとく化していた。方々で泣き声や悲鳴が上がり、次々と人々が倒れていく。
誰もが自分のことで精一杯で、子供を助けようとさえしない。それどころか周りを押しのけ、他人を犠牲にしてでもみずからが生き延びようとしている。
極限の状態だからおかしくなっているのではない、そのゆえにこそ、人間の本質があらわになっているだけであった。
「とんでもないことになったわね……」
アーデは家の陰に潜みながら、ただひたすらに嘆息する他なかった。
これが人間の弱さ、醜さだ。
いつもは隠れていた本性の一面が、追いつめられて表面化した。
人間は浅ましく、自分のことしか考えない。それが負の側面に関する否定しようのない現実であった。
――でも、他人事というわけでもないけれど。
自分たちでさえ、けっして例外ではない。現に今こうして、何もしようとせずに安全なところで傍観していることしかできないではないか。
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