[つばさ] 最新話を投稿:第八章 終わりの始まり 第五節――無料で読めるファンタジーのオリジナル長編小説
(冒頭部分)
複雑な思いというのは、こういうことを言うのだろうか。
自分の予感が当たってほしくない。しかし、おそらくそれは当たっている。そして、それを確認するためにはもう一度〝同族〟を見つけなければならない。
見つけたら、その時点で予感が的中したと考えていい。だから、できれば会いたくないのだが、見つけないことには自分自身が先へ進めなかった。
――ベアトリーチェ。
彼女のことも気がかりだった。
たぶん帝都の中にいるのだろうが、もし外に出ていたら夜目の利く翼人であってもさすがにこれから見つけ出すのは難しい。
帝都内に残っていてくれることと、ジャンがその彼女を見つけてくれることを期待するしかなかった。
もう春とはいえ、日が落ちるとさすがに冷える。翼人は寒さに強いものの、ずっと飛びつづけていると、風に体の熱を奪われてしまうものだ。
そろそろいったん休憩すべきか――そう思いはじめた頃、遥か前方の木々がわずかに揺れるのが見えた。風の流れとは違う不自然な動き。
何かがいる。
ヴァイクは、静かに地上へと降りていった。
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