[つばさ] 最新話を投稿:第五章 真実 第三節――無料で読めるファンタジーのオリジナル長編小説
(冒頭部分)
今日の姫は、朝からずっとそわそわしっぱなしであった。
自分の部屋にいても、広間にいても、そして大好きな中庭にいるときでさえ、こころここにあらずといった様子で何かを思い悩んでいた。
あの、いつも明るく闊達なアーデがおかしくなってしまった。その噂はたちまちのうちに広がり、今では城内全体が異様な空気に包まれていた。
誰かが話しかけてもほとんど上の空で、『うん』とか『そうね』といったおざなりな返事しかかえってこない。やがて、誰も姫に近づくことさえできなくなってしまった。
こうなったら、あの男に期待するしかない。この城で、フェリクスを除いて唯一アーデと対等に渡り合える、あの騎士に。
いい加減に疲れたらしく、自身の居室でベッドに倒れ伏しているアーデのもとに、とうとうユーグが現れた。
「どうだった!?」
がばっと跳ね起きたアーデに、ユーグはあからさまにため息をついた。
「なんなんでしょう、このみっともない姿は」
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